第26話 勘違い……?

動揺のあまり、響さんを睨んだまま、周りに人がいるのに僕は声を荒げそうになった。

でも寸前のところで、優に腕を掴まれて我に返る。

「え……っと」

だんだん冷静になってくる。

そもそも響さんは、マンションの管理人さんだ。

事を荒げて、住めなくなるのは最悪だ。

だからといって、怒りが完全になくなるわけじゃない。

「実は勘違いしてます……」

「……え?」

優に言われて、あっと思う。

まさか勘違いなんてことあるのだろうか……。

(管理人さんが犯人を見つけてくれたとか……? 止めてくれたとか?)

わからない。

今、目の前にある、なにもかもが不快で仕方ない。

「ごめんなさい」

優が掴んだ腕を震わせながら謝ってくる。

「……後で説明して。キチンと」

「はい……」

響さんはといえば、ボサボサ髪に隠れて、どんな表情をしているのかわからない。

(……っていうか、電車にもジャージで乗るんだ……)

「俺は悪くないしなぁ」

「え……」

本人からもそう言われては、自分の落ち度かもしれない。

(勘違い……? 痴漢じゃないのに怒鳴るところだった?)

なんか急に、申し訳なさと恥ずかしさがこみ上げてくる。

「それなら、僕は……」

「謝るのも違うがね」

「……どういう」

「目隠しカフェについたら話そうかねぇ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る