第25話 一緒に(★)

朝の特急は今日も混んでいて、ただ前回と違うのは、最初から寄り添って乗ったことだ。

「優……、座れなかったから、ドアに寄りかかって」

「……大丈夫ですよ」

「僕が気にする」

「わかりました……」

とは言え、外出に慣れていない僕は、ドアに背を預ける優の目の前で、何度も、波に飲まれかける。

「大丈夫ですか?」

「……ああ、うん。なんか情け……」

情けないと続けたかったけど、タイミングの悪いことは重なるものだ。

「!?」

まただ。

前回はたまたまだと思ったけど、今回は……。

最初は左腿をガッと掴まれて、ギョッとした。

でも、その時ちょうど人の波が左へと流れたので、そのせいだと思った。

つかまる為だと。

(……待って。なんか腰に熱いものがあたるような……?)

なんか、ずっとグリグリ押し付けてくる。

僕がはねのけないのがわかったのか、少し開いていた足の間にスッと手を差し込まれて、振り向いて文句を言おうにも、人がいすぎて出来ない。

無理に振り返ろうとしたせいで、足が閉じてしまい、内腿に手を挟んだ形になる。

窮屈そうに上に下へと指が辿り、ぐっと押し込まれる。

大事なところは触られていない。

でも体を意図して触られているのだ。

我慢できるわけない。

「優……。優って!」

「……っえ」

一瞬、僕を見たけど、赤面して困っている僕を見て、気まずい顔をしている。

(え、なん……)

まさかと優のそれを見下ろす。

(優、おま……勃ちかけてるじゃん!)

「……っう」

後ろから撫でるだけだった指先のところまで手首をぐっと入れると、あろうことかその痴漢は、優のそれを撫で始めた。

僕の目に晒された状態で。

(少しでも気をゆるめたらヤバい)

首の後ろに熱い息。

息遣いを聞く限り、青年のように感じる。

後ろの痴漢が優のそれをスーツの上から撫でる度、挟まったままの手首から腕が、僕の内股でこすれる。

(コイツ、僕を使って優に痴漢なんて……っ)


蹴り飛ばす勢いで振り返った僕は目を見開いた。

「!」

相手も、びっくりしてる。

「え……」

僕は見間違えたのだろうか?

そこにいたのは、管理人の響さんだった。

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