第24話 お口あーん
優が病院にいる間、出来る限りのことはしようと思った。
でも優が望んだのはひとつ。
「え、ご飯を食べさせてほしい? お口あーんで?」
「……はい」
僕が眉を寄せると、優は頭痛がする振りをした。
「そんなにしてほしいの……?」
「はい」
「仕方ないなぁ」
「……ありがとうございます」
それを僕は優が甘えてるんだと思ったけど、後から考えたら、僕にでも出来ることで、今回のことを気にしないようにと言う、優の優しさかもしれなかった。
優は退院するとすぐ、「姫」に会いに行くと言い出した。
「でも、まだ休んだ方が……」
「姫との約束をやぶったので、ペナルティがあるんです」
「ペナルティ……?」
「……はい」
「どんな?」
優にしては珍しく、不機嫌そうな顔だ。
「ごめ、僕のせいだよね」
「! い、いえ……。ボクの不注意なので」
怒ったのかと思って、見上げると、そうではないようだ。
どちらかというと、哀しい顔をしている。
「僕に出来ることなら……」
「……あ、いえ……。その」
「僕じゃ役にたてない……?」
「……いや、そ……の。あ、じゃあ!」
優は、何を思いついたのだろう。
急に晴れやかな表情になる。
「ついてきてください! 目隠しカフェまで」
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