第20話 気になったこと
それから30分くらい、ドアの向こう側に行けなかった。
その間、優が来ないのは、処理するための時間として、気を遣ってくれているのかもしれない。
でも、実際はなにもしてはいない。
ただ気分が沈んだお陰で、どうにか大事な部分はおさまってくれた。
ほっとしたのと、自分にあきれたので、深いため息をつく。
(どうしようもないな。僕は……)
気分がだんだん落ち着いて、そしたら急にお腹がすいてきて、どうしようかと迷った頃に、ちょうどご飯ができたのか、もう一度、優がやってきた。
「ご飯、一緒に食べませんか?」
「……」
「ボクがちゃんと言えばよかったです。全部、ボクのせいです」
「……優は、いつも」
結局、僕には優が必要なんだ。
「どうしました……?」
「なんでもない……」
「じゃあテーブルに並べてきます。その間に着てください」
「わかった」
ずっと一緒にいるためには、こういうことは目をつぶらないといけないんだ。
(もう、ほんと、僕って)
どうしようもないなって思う。
(……こんな駄目な僕を、優は)
でも、一時的に反省はしても、また間違ってしまうのだ。
「今日は納豆ご飯とお味噌汁と焼き魚です」
「珍しいね」
「浮かばなくて」
「? 浮かばない……?」
優は作りなれていて、料理なんていつもすぐに作るタイプだ。
「普段、悩んだりしないのに?」
複雑そうに、優が見つめてくる。
僕に向けて開きかけた唇は、震えたあとに閉じられる。
「なんだよ。言いなよ」
「……ごめんなさい」
結局、無理に聞くこともできず、謝罪をしてきた上、ご飯まで作ってくれた優を許さないわけにもいかず、なーなーになった。
ただ、食べながら、何を言いかけたのかが、気になって仕方なかった。
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