第19話 気遣い

その日の朝、6時になっても優は来なかった。

空腹でだんだんイライラしてきて、でもなんで来ないんだなんて聞くこともできない。

優がうちに来るのは約束じゃない。

ただの好意だから。

(もう、いいや。あんな夢も見たし、また浴びるから)

僕は優に確認せずに、またシャワーを浴びることにした。


物音がした気がした。

今更来たのかって思って、でもそんなこと思う権利もないなって、落ち込んで、ムシャクシャして。

「実……?」

気づけば、ドア越しに気配がある。

「……」

すぐに返事をしようとしたけど、その時、ちょうどシャワーを浴びていたし、その音で聞こえない振りをした。

「……怒ってますか? ごめん、なさい……」

その言葉に余計怒りがこみ上げて、シャワーを止めると、体を隠すのも忘れて、バンッとドアを開く。


「み、実……!?」

何に驚いているのかと思った。

幼い頃に、何度も一緒に洗い流しっこさえしたというのに。

普段なら、そんなこと思わない。恥ずかしがる。

でも、その時は恥ずかしさより怒りが勝って、全く隠す気がなかった。


「いや……、あの……」

「?」

「ボクは気にしませんが、でも実、後で」

「……なんのこ」

なんのことって言いたかったけど、それは最後までつむげなかった。

おそるおそる視線を下にやる。

「!?」

そう、勃っていたのだ。

怒ったせい? 

夢のせい?

なんのせいかはわからない。

「出てけ……っ!」

僕は思い切りドアを閉じて、背中を向けて、両手で顔を塞ぎ崩れ落ちた。

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