第15話 シャワールーム
優には仕事があるので、ひとりで帰った。
どうやって帰ったのかわからない。
ずっと考えていた気がする。
「待っててくれるなら、一緒に帰りませんか……?」
優はそう言ってくれたけど、僕は首を横に振った。
家の玄関からお風呂場まで行く途中に、また思い出してしまう。
(反応したのも恥ずいし、でもすぐにおさまってくれてよかったぁ……)
優にマッサージを受けた目隠し部屋。
目隠しカフェには、いくつもの部屋があり、そのひとつだったのだが、部屋を出るなり、優が言ったのだ。
「手伝いましょうか?」
「……え」
それがどういう意味か、わかったけどわかりたくなかった。
俯いた時に、反応してしまっていた自分に気づいたから。
「こういうことはよくあります。なので、その為の部屋もあるんです」
「え、あるの……?」
「ええ」
じゃあ、優からすればどうってことがないんだ。
そう安堵した。
でも、なぜかふと淋しさも感じてしまう。
嫌な気持ちにもなった。
(……変なの……)
案内されたのは僕らがいた目隠し部屋の左側にある部屋だった。
その部屋は、目隠しカフェの受付の地下に降りて、真っ直ぐ奥の部屋だった。
「ここがシャワールームです」
その部屋の中に入ると、更に5つの個室があった。
でも、どこに入ればいいかわからない。
「シャワールームを使う時は、入口の表と書かれた看板をひっくり返して裏にします。今は一番右しか空いていないので、そこを使ってください。それぞれ防音で、隣にすら聞こえないので、好きなだけして大丈夫です」
「す、好きなだけって……」
真っ赤になっている僕を見て、優はヨシヨシと頭を撫でてくる。
僕は余計恥ずかしくなって、それを振り払い、ハッとして優を見上げた。
「小さい頃は、一緒にお風呂に入ったじゃないですか」
哀しそうな顔をされて、気まずい気持ちになる。
優が嫌いなわけじゃない。
むしろ親しすぎて恥ずかしいのだ。
「それとこれとは違う!」
「違いませんよ。意識でもしてるんですか?」
なんとも言えない顔で、視線を彷徨わせる僕の体を、ドアを開けた中へと押し込むと、「ここで全部脱いでください」と、優が微笑する。
「出てってよ」
「なぜ……?」
そこまでが仕事なんだろう。
「え?」
でも、僕からしたら信じられない。
「ボクが手伝いますよ」
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