第13話 緊張

「大丈夫ですよ、実。目の前の白い椅子、ふかふかなので沈みますが、気をつけながら座ってください」

「あ……、うん」

言われるまま、僕は高級マッサージ機みたいな白い椅子に腰かける。


「じゃあ目隠ししますね」


すぐに目隠しするかと思ったら、めちゃくちゃスローモーションに思えた。

黑い布が、肌をくすぐりながら、ふたつの瞳を覆っていく。

「……っ」

早くしてくれと言いたいのに、それはそれで怖いと、今さら思う。

「そんなに緊張しないでください……。目隠ししないと始まらないので」

一回、ぐいっと優の胸を押し返し、優を睨んだ。

「ん、わ……わかってるよ」

声は震えるし、首から上がカアッと赤らむのがわかる。

そんな僕を見て、優が余裕を含んだ笑みになる。

「優の意地悪……!」

「……そうですか? ボクは優しい方ですよー?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る