第12話 情けない

ずっと抱きしめてくれている優が、僕を落ち着かせようとしてなのか背中をポンポンするもんだから……。

「……あのさっ」

逆にそわそわしてしまう。

正直、やめてほしい。

「大丈夫。もしまたなにかあったらボクが守りますから」

それは嬉しかったし、ありがたかった。

「背中ぽんぽんはやめて、子供じゃないんだからっ……」

ついに耐えられなくなって、上擦った声をあげると、目の前の優の方が、大げさに驚いて、体を少し離してくれた。


どちらともなく視線を外し、そのまま沈黙していたけど、停車のアナウンスが流れ、気まずくても、どうするんだろうと気になってしまって、おそるおそる優を見る。

僕が喋るより先に口を開いたのは優だった。

「実」

「……」

「もうすぐ着きますよ、実」

「あ……、りがと」

いつもリードするのは優だ。

(なんか、情けないな……。僕)

自然と繋がれた手にひかれながら、僕達は駅の出口へと歩いていった。

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