第11話 電車

準備が終わると、僕らは徒歩で少し歩き、電車に乗った。


朝の特急はかなり混んでいて、電車に不慣れな僕は、右へ左へ、よろめき続ける。

最初は手すりを掴んで、それを目で追うだけだった優も、たまたまなのか痴漢なのか、腰に異物感を感じて、声にならない悲鳴をあげる僕を見て、強引に近寄ると、ギュッと前から抱きしめてくれた。

「大丈夫ですか?」

「……ん、んー、あんま……り」

抱きしめてくれたのはいいが、耳元で喋るのはやめてほしい。

「具合、悪いですか……?」

耳が弱いからとか、お前のせいだからとかは言えない。

「なんでもな……い」


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