第36話思い出シリーズ2
今回は、僕は名古屋で就職して頑張って、夏休みに帰郷して、弟と焼き肉を食べた思い出を書いてみたい。
僕はその頃、25歳だった。
弟のヨシは23歳で鹿児島市内の谷山の社宅で暮らしていた。
電車を乗り継ぎ、弟と久しぶりの対面。
「ヨシ!元気だっか?」
「うん。兄ちゃんも元気みたいだね」
と、兄弟仲良く社宅で会話した。
「ヨシ、この辺に飯食う所あるの?」
と、弟に尋ねると、
「スーパーか、焼き肉屋と、バーしかないよ」
「なれば、焼き肉屋にさね、行っがほいっ」
「兄ちゃん、焼き肉高いよ!」
「心配するな。名古屋で頑張って稼いでいるから」
と、2人で焼き肉屋に行った。
弟がソワソワしていた。
「ヨシ、どこか具合でも悪いのか?」
「いや、初めての店だから緊張している。だって、焼き肉屋だよ!」
と、弟の話しを聴くとスーパーのもやしと鶏ガラを買って煮て食べているそうな。
僕も、鶏ガラは好きだ。骨だけに見えるが、身もちょっと付いている。
そう言う、僕も貧乏だったのだ。
だが、弟にお兄ちゃんらしい事は何一つしてかなかったから、残業を頑張り金を作って帰郷したのだ。
まずは、生ビールで乾杯した。
肉が届く。弟が焼き始める。センマイ刺しが美味しかった。
弟は遠慮勝ちにビールを飲んでいたので、気にするな!と言ってビールを散々飲ませてから、焼酎を飲んだ。
鹿児島は芋焼酎だ。当たり前だ。
焼酎を2人で呑んでいると、
「兄ちゃん、テールスープって何?」
「……」
「テールって?」
「頼んみゃん」
と、言うと弟はテールスープを注文した。
暫く、焼酎を呑んでいると、テールスープが来た。
「兄ちゃん、わっせ、美味しい。どこの部位?」
「しっぽ」
「尻尾のしっぽ?」
「まぁ、あの辺りだよ」
と、自分も疑いながら説明した。2人して酔っ払って、笑いっぱなし。
僕ら兄弟は仲が良い。そして、40を超えても仲が良い。
帰る前に、喉が渇いたので、弟にお冷やを頼んで!と、言うと、
「兄ちゃん、お、お冷や?まだ飲むの?僕はもう飲めないよ」
「良いから2杯頼みなさい」
と、言うと弟は恐る恐るバイトの姉ちゃんに、
「お、お冷やをば2つ」
と、言う。
そして、お冷やが届いた。弟は僕の様子を伺っている。僕は一気にお冷やを飲み干した。
「……やっぱ、兄ちゃんつえぇ。僕は飲めないかも」
と、言うので無理やりお冷やを飲ませた。
「ゴクッ!……何これ?水じゃん!」
弟は「お冷や」を知らなかったのだ。
その思い出は、未だに帰郷して僕と弟家族と焼き肉屋に行くと伝統的にこの話しをする。
大人達は爆笑。
でも、あの頃、穴のあいた軍足で車の整備をしていた弟が、会社は変わったが何十年も車の整備で必死にお金を貯めて、去年マイホームを新築した。
人の運命は分からないもの。
あの時のお冷やは、面白かったなぁ。
まさか、焼き肉なんかの記憶より、水の思い出が強い。
年取れば、相応の酒飲みをするので楽しいものだ。
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