第7話 ダンジョンの種を埋める場所
ーside フィルー
「ただいまー」
卵を孵した俺は子ドラゴンのラピスと子フェンリルのリルを連れて、家へ帰ってきた。
ここに来るまでに人に会わなかったのは良かった。一応最初に両親に相談してから対応したかったからな。
どのみちテイマーギルドに行って従魔登録はしないといけないからその時にバレるけれど、できる限りの根回しはあらかじめしておきたい。
俺の冒険者ギルドで働いていた時の実績や父親の推薦状などがあれば、若干だけど対応も異なるかもしれない……やっぱり、騒ぎにならないのは無理かもしれない。
「キャンキャン!」「ギャア?」
ここが主人の家なの?と聞いている気がする。「そうだ」と答えると2匹は嬉しそうに家の周りを飛び回る。
あちこちの匂いをくんくんと嗅いでいる。ワクワクしているという感情が流れてきた。
「ギャーーー!」
「あっ!母上」
誰もいないと思ってホッと一息。油断していたら、いきなり叫び声が聞こえた。急いで声にする方を見に行くと、母上--エルザが尻餅をついていた。
「キューンキューン」
泣きそうな声で、リルがこちらへ来る。
驚かせてしまったようだ。
「母上、ごめん」
「いいのよ。それよりその子達ね。さっき、ルドルフから泉に卵を孵しに行ったって聞いたわ」
「うん」
ルドルフというのは父上の名前だ。
どうやら、混乱しないように事前に手を打ってくれたようだ。その証拠に、驚いた様子は見せても、もう落ち着きを取り戻している。
「父上も呼んできてくれる?話がしたんだ」
「分かったわ」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「おー!これはまた元気な子ドラゴンとフェンリルが2匹……2匹?」
「父上、今説明するから座って座って」
「う、うむ」
事前にお茶を作って置いておいたので、その席に促す。ダンジョン工房の種を俺の目の前におきながら事の経緯を説明した。
「まあ!」
「な、なんとそんなことが!」
両親はとても驚いている。
誰だって、こんな事が起これば嘘だと思うだろう。だが、実際目の前に魔物や神々しい種があるのだから信じるしかない。
「ふーむ実は、その銀色の卵がフェンリルなのは事前に知っていたのだが」
「知ってたんかい」
「ガハハハ!黙っててすまない。だが、先に言ってしまっても面白くなかろう?」
そうだった。この人昔からこういうところあったんだった。サプライズ大好き人間。
「まあ、そうだけど……」
「それに、何もわからずにそれを泉に持っていったから、泉の神様がお前にこの種と子ドラゴンを育てるという使命を下さったわけだ。こんな面白い……ゲフンゲフン奇跡的で崇高な出来事を見たのは初めてだ」
「今、面白いって言ったよね、人が結構悩んでいた悩み事の事を面白いって」
「パパ、そういうノンデリなところあるの、分かってあげて」
それを、憐れんだように隣でいう貴方も結構ノンデリでは?と思わなくない。うちの両親は結構デリカシーに欠けている。
「とりあえず、この後どうすればいい?」
「そうだなあ…ダンジョン工房の種は、お前用に取っておいた土地に埋めるのがいいんじゃないか?」
「あーあそこか。分かった」
「従魔契約については俺の方から、冒険者ギルドとテイマーギルドへ根回ししておく」
「助かる。それじゃー、明日はダンジョン工房の種を植えるか!」
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