第26話 可能性
前回の土嚢袋に対して、今回は塩ビの買い物カゴ、マイバスケットとかああいう奴だ、を拾った。買い物カゴにはピカピカの新品ばかり入っててお買い物ですか、という見た目だが、大半は多分ゴミだ。
糞ゴリラの筋力からしてこのカゴでは全く障壁にならない。この琥珀色の施設がコンクリートの施設と同じ構造をしている保証はないが、右手が換気扇の袋小路になってる点や青顎の出現は完全に共通している。恐らく10kmほど歩けば階段があり、2階は冷凍倉庫で、糞ゴリラがいる。
殺害か回避かは問わず、糞ゴリラをどうにかする準備が必要だ。
青顎の奇襲にも即時対応できるようになった頃、袋小路に入ると青白いキューピー人形があった。
案の定、キューピーを凝視するよう視界が固定される。銀目玉はキューピーとセットらしい。
問題は、視点がかなり高い。天井からキューピーを見下ろしてる。電気柵に少しずつ近寄り、自分の姿が見えるようにするが、頭頂が見える。
以前のようにキューピー人形を掴んで私の視界に向けて振り回して見るが、キューピーと私を合わせても2m程度しかないので、ガストーチに触れることはできても3mの天井には全く届かない。
キューピーをおろし、息を深く吸って止める。
視界にうつる私が浮き上がってくる。視界に手を伸ばすと、ラグビーボールのような物体をつかんだ感触がある。
物体をしっかりと両腕で抱きしめ、息を吐くと、落ちることに抗うラグビーボールにしがみついてるような奇妙な状況になる。感じとしては、水中でビート板を沈めようとする時の抵抗に似ている。
つかんでる物体をココナッツを割るようなポーズで壁に叩きつけると何かが割れる音がし、視界が元に戻る。
今回の探索の始めでレシートの能力に気がついたから良かったが、レシートの能力に気がつかないままだったらどうなったのだろうか?
視界をジャックされたままでは何の行動もできない。
3mの高さから飢えて渇いて死んでいくか、苦しみに耐えられず電気柵をつかんで死ぬ自分を凝視し続ける可能性もあったのだろうか?
それはつまり、今手元にあるガラクタの正しい効果を探り当てなかったらこの先、糞ゴリラなんか目じゃない想像を絶する方法で苦しんで死ぬ可能性もあるのかもしれない。
なんなのかわからないマジックアイテムの発動条件を探す途方もない作業が必要らしい。
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