第25話 ゴミ

最初に持ってたレシートの切れ端がマジックアイテムなら、1階で見つけた様々な用途不明物にはマジックアイテムが含まれているのかもしれない。


大怪我のたびに人体を元通りにする医療技術、見えなくなった途端に移設される換気扇、銀目玉による視覚の強制共有、そして息を止めると浮力を得られるレシート。ここは超常現象が普通なのだ。


善は急げと右手の袋小路をどんどん見てまわる。


青顎、中身のないがま口、トイレットペーパー、青顎、指サック、ダブルクリップ。


そうだ。ダブルクリップ。前回の探索でも拾ったから、これは特にマジックアイテムの可能性が高いんじゃないか?クリップを開け閉めしたりツナギに挟んだりしてみる。


何も起こらない。そもそもレシートの切れ端の能力は、息を止めると浮力を得られることだ。レシートという物体の持つ属性は、能力にも発動条件にも、何のヒントにもなっていない。


発動条件がわからなかったら、ゴミそっくりのマジックアイテムと本当のゴミの区別はつかないのだ。


すると最適解は何か。どう見てもゴミにしか見えない物も、不用意に捨てたり焼いたりはせず、マジックアイテムである可能性に賭けて持ち歩くから際限なく所持品が増えていくことになる。


私は、「いつか使えるかも」というゴミを溜め込んで倒壊しかけるゴミ屋敷と化さざるを得ない。

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