第21話 Lv3
右手の法則が失敗してるらしいので、今度は左手の法則で行く。
骨の髄まで冷え、手の皮や唇が裂けてきた。
少しでも体温を上げるために早歩きで進んだが、すぐ空腹と寒さで音をあげた。
どんなに死の恐怖に包まれてない気力を湧き立たせても、湧いた途端に寒さに奪われる。
「左手にまっすぐ行けば暖かいところに行ける」と自分を騙してなんとか歩き続ける。
何もない倉庫を3つ過ぎた時、倉庫の右手の通路で何かが動いた。
クソッタレ、もういい、どうせ青顎だ。こいつを殺して熱を奪ってやる。あの臭い血でも今なら温かいだけでご馳走だ。
「ふるぁあああ!!!!来いや!!!」
ガラスのナイフを右手で振り上げ、土嚢を左手で振り回して威嚇する。青顎といい、銀目玉といい、「敵」は好戦的なので挑発すれば必ず反応するはずだ。
モッ モッ
鳴き声がおかしいが、見た目はゴリラだ。
四つん這いでこっちに向かってくるが、部屋に入ってきた瞬間、恐ろしいほどの糞便臭が漂ってくる。寒いのにこの臭いだから暖かいところでは卒倒するレベルだろう。
ボグッ
呆気に取られて立ち尽くしているところで、ゴリラの右前足がアンダースローしたかと思うと、鈍い音とともに左腕に激痛が走って感覚がなくなり、土嚢袋を落としてしまった。
防刃繊維のツナギは無事だったが、衝撃だけで腕が折れたらしい。ぶつけられた物はゴリラの糞便臭の塊だから糞以外あり得ない。
意味がわからない。
ゴリラは突進してくるかと思ったら急旋回し、常に私の目を見ながら、私を中心に回っている。
まさに糞ゴリラ、奴との初遭遇だった。
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