第17話 取得物

丁字路を今度は左へ。右手は壁につけたまま。


現れる分岐を右に行くと必ず、換気扇によって閉鎖された袋小路。


1部屋目は青顎だった。キューピーの胴はバラバラにされたが、今度は殴り潰さずに電気柵へ投げ飛ばした。人間でも感電すると失神するような大電流が流れているので、頭ほどしかない動物には致命的だった。


漫画やアニメのように閃光や稲妻が走ることはなく、青顎の身体が普段の8割くらいまで小さく縮まり、電気柵を小さな手で掴んだまま動かなくなった。


青顎の刃を無傷で奪うつもりで思いついた殺し方だったが、この状態で触ったらこっちも死んでしまう。しかし、労力や危険を最小限に青顎を無力化するには最善の方法だった。なので、刃を奪う方法が思いつくまで、電気柵で始末していった。


それから、電気柵の前に何かしらの物品が置かれてるか、青顎がいるかが繰り返された。初手で左手の法則を採用したのは失敗だったようだ。


物品はゴミとは言えないが、これが欲しかったんだとも到底言えない、この異常な施設で役にたつのかも微妙な物が大半だった。500mlの空き瓶。何も入ってない土嚢袋。青色の刺繍糸。感熱紙一巻き。ダブルクリップ1個。他にも色々あったが、思い出せるのはそんなところだ。


捨てて行くのも勿体ないので、土嚢袋に刻まれたシャツやキューピーの残骸とともに放り込んでいく。


品物を列挙するとまるで清掃作業だが、どれもこれも清潔な新品なので「これで何かしてみろ」という意図は感じていた。


そんなに欲しくもない物に囲まれていると、本当に欲しい物が浮かび上がってくる。


綺麗な水と「敵」と距離を取れる頑丈な棒だ。

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