第14話 銀目玉

ガンッゴンッ


殴った物体は金属製で、中身はあるものの空洞が多いようだった。頑丈な目覚まし時計をコンクリートに叩きつけたらこんな音がするかもしれない。


視界が戻ったということは、この機械らしき物体が超常現象を起こしていたということになる。


キューピーを放り捨てて壁に物体を蹴り寄せると、鉄板の入ってる爪先で抉るよう蹴りを入れながら壁と床で押しつぶす。機械は死んだ証拠がわからない以上、原型を留めなくなるまで変形させるしかない。


機械はアルミで作ったラグビーボールを軽く潰したような、先の尖ってないアーモンドのような形だった。


もともとは薄ぼんやり光ってたらしく、内部の空洞が潰れる感触とともに物体は黒くなった。


安心できない。明かりが消えただけかもしれない。くの字に曲がって外枠が裂けてるところを開くように踵で何度も殴りつける。中には石灰のような白い粉末を固めたブロックが入っている。ブロックも部品の可能性が高いので砕いては踏み潰して粉にしていく。微動もせず、床に転がる残骸と成り果てたところでひとまず無力化したことにして、観察のため残骸をひっくり返す。バラバラと粉々になったガラスが地面に散らばった。


この物体は「機械」と呼ぶようなものではなく、片側面がガラスでできたアーモンド型の金属筒に白いブロックを収納したような「容器」と形容すべき物だった。


ガラスには黒い丸がペイントされていたようで、元の状態は瞼つきの目のような姿だったらしい。人の視覚や触覚に干渉するような特殊な装置は勿論、これが微発光したり私の背後に浮かぶような挙動を示せるような装置さえ見当たらなかった。


銀目玉は、能力から挙動まで全てが超常現象だった。

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