第4話 Lv1

すぐ換気扇にぶつかった風上と違い、風下は500mほど進んでも行き止まりにあたらない。分岐がいくつもあり、「左手の法則」というそれが本来何を指すのかも思い出せないフレーズに従って左へ左へ進み続けた。


絶え間なく供給される風は私を生かし、ガストーチを燃やし続けるのに必要だ。ガストーチも唯一の光源なので燃え続けてもらわないと困る。


だが、ガスが吹き出して燃える音、風の音、換気扇の重低音は些細な物音を紛らわし、排気ガスとともに風下の臭いをわからなくさせた。


200mほど進んで、こんなに歩いても通路しかないとはどういう施設なんだと訝しみ、丁字路を左に曲がった時だった。


突然右半身に20kgほどの、獣臭のする何かがのしかかり、首筋に激痛が走った。


何かは飛び退くとそのまま通路を走り去るが、通路が暗くてなんなのかがわからない。


首に傷をつけられたのだけはわかったが、そこいら中血まみれで、呼吸はできてるのに「息ができない」という恐ろしくて奇妙な感覚で、通路はどんどん暗くなり激しい耳鳴り、吐き気、眩暈、窒息感がどんどん強くなり何も考えられなくなっていく。


自分がなんなのか、「何」とは何か。


感覚も光も無くなっていき私は意識を失った。

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