第2話 風上
この記録を読むのはどうせ経験者だろうが、まかり間違って、迷宮の外でこの記録が閲覧された時のために、あるいは迷宮に連れて来られたばかりの読者のために書いている。
そうだ。残念だがここは何かの通用路ではない。迷宮だ。
経験者は「あーわかるわかる」とでもうなづいてくれ。
何もない通路に置き去りにされた時、選択肢は3つある。行くか、戻るか、待つか。
待ったところで飢えと渇きで死ぬのは目に見えているから、「待つ」を選ぶ気はなかった。
行くか、戻るか。
そもそもどっちが奥でどっちが外なのか。
風は通路を常に一方向に流れているので、「風上」と「風下」がある。
「屋外」より広い「屋内」は常識的にあり得ないので、外の空気を取り込み奥に向かって流しているはずだ。外に出るべきだ。風上に行こう。
通路の風上側へ50m(多分)すすむと突き当たりになり、左右に分岐している。どちらからも風が吹き込んできている。「左手の法則」という言葉をが脳裏をよぎる。なんの法則だったかは思い出せないが、行幸、左に行こう。
分岐はないが突き当たりに壁があり、曲がると巨大な換気扇が通路の途上に立ち塞がった。
換気扇の奥はまだ通路が続いているようだが、それが外に通じる空気の取り込み口なのは疑いようがない。換気扇の隙間を通れば外に出られる。換気扇の手前には埃のこびりついたフェンスが通路の壁にはめ込まれている。見た目から腐食してるようなので力を込めれば壁から外せそうだ。
フェンスに手をかけた瞬間、凄まじい灼熱と衝撃が手から入り込んで体内で爆発し、意識が消失した。
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