第3話闇鍋ガチャ
レイシスが用意したそれは普通にテーブルだった。特に何かがあるというわけでもなく何の変哲もない。
「さてさてさ~てぇ~こちらが何なのか、気になりますよね!?」
ずずいと顔に近づて激しくアピールしてくるレイシス、正直眩しすぎて目が痛い。
「近い、あと眩しいから近づかないでくれ」
「あっごめんなさ~い。……って眩しいって言いました!?もしかして光源呼ばわりされていたのって本当に私が光源にしか見えていなかったからそう呼んでいたんですか!?」
「え?そうだけど?」
「うえぇ―――!!!!??それは本当ですか?うそでしょ……。えっと、あっ!ちょっと待ってくださいね!」
そういってレイシスはああでもないこうでもないとぶつぶつ言いながらテーブルの周りをぐるぐる回りだし始める。
数分経った頃、よし!という一言とともにレイシスが一際強く光りだす。
「うっ、眩し!」
「ふう~さ、目を開けてみて下さい、
そうレイシスに言われたのでゆっくりと目を開ける直人、目を開けたときそこにいたのは小さな妖精だった。
「え?もしかしてレイシス、か?」
「はい、そうです!どうですか!?かわいいですか!?どうなんですか!?」
グイグイ顔に近いてくるレイシス、光は抑えられており眩しくはないがドヤ顔で頬を押し付けてくるため非常にうざい。
「うざい、近い、離れろ!かわいいかどうかなんて近づかれすぎてわからねぇよ!」
そう言って手で押し払う直人、レイシスはどこか残念そうんだ。
「あ~もうっ。……まあでも確かに離れませんとお姿は見えませんよね。それで、あらためて見てどうですか?」
「ん?あ~……」
横目であらためて見てみる。
はっきり言って女神というだけあってとても綺麗だ。それに妖精という小柄なサイズになっていることでかわいさも増している。さらに付け加えるなら出るところはしっかりとでて、絞まるところはしっかりと絞まった完璧な体をしているため文句の付け所がない。強いて言うならやたら行動がうざいところだ。
「まあ女神と言われれば納得する容姿はしているとは思うぞ」
「むふ~!そうでしょそうでしょ!いや~褒められるのは嬉しいですね~!!」
ドヤ顔でルンルンするレイシス、それを見て直人は静かにため息をついた。
「―――それで、話が脱線しまくってるが結局そのテーブルは何なんだ?」
「あ!そうでしたね!改めて説明しますとこちら、ガチャになります!」
「ガチャ~?」
レイシスは丸テーブルの上に腰かけるとテーブルの機能の説明を始めた。
「この世界はいわゆる鬼畜、ですよね?」
「まあ俺のゲームを元に作られた世界ならそうだわな」
「はい。そして私はこの世界の権限のほとんどを奪われてしまって直人様の手助けがほとんどできません。そこでこちらになります!こちらは今ある私の力、すべてを注ぎ込んで作った贄を対価にアイテムだったりを交換する、つまりガチャというわけです!」
「アイテムだったりって何が出るんだ?」
よくぞ聞いてくれました!!と人差し指立てる。そしてどこから出したのか洞窟に似つかわしくないホワイトボードといつの間に着替えたのかぴっちりスーツ姿に眼鏡をかけた教師のコスプレに着替え、レイシスに合わせた大きさの長い棒でホワイトボードを
「それで排出率になるのですがこのガチャはランク形式になってるんです!ランクはG~Sまでの八つ!最高ランクがSでありもっとも出にくいランクです!それから出てくるものは様々!仲間となる魔物から武器や防具、スキルに素材や特殊なアイテムまで排出されます!そして特殊なアイテムにはこの世界から現実に帰還することのできるアイテムや
そう言ってレイシスはニコリと笑って見せた。
どんな病をも癒す薬、それって!
「それは現実世界へ、俺のいた世界へ持っていくことは可能なのか!?」
「ええ、もちろんです!」
手に入れば
少しだけ希望が湧く、もちろんまだ治療するすべはある。ただ大金も必要になるし心臓病の手術の成功確率もとても低いらしい。それなら安全にかつ早く治療できるのなら是が非でもほしい。
綾香の治療への希望が見えたが直人はふとあることに気づく。
「ん?ちょっと待ってくれ、そのガチャは特定のものを狙って引くことは可能なのか?」
「え?いえ、すべて混ざった中からしか引くことはできませんよ」
ちょっと待て、てことはつまり……。
「闇鍋ガチャじゃねえかあああぁぁ!!!!」
洞窟の中に直人の声が響き渡ったのは言うまでもない。
「はあ……どうしたもんかな」
闇鍋ガチャ、それは今のスマホゲーム内でもっとも忌み嫌われているといっても過言ではないシステム。簡単に説明するとお目当てもの以外にも複数の物が同時にピックアップされたガチャのことで複数の人間がそれぞれ不明な材料を入れて調理する闇鍋と似たようなガチャなので闇鍋ガチャと呼ばれている。
それにこれは確率の指標もなくかつ出るランクは七つもあるらしい。スマホゲームの闇鍋ガチャよりもひどいかもしれない。
希望があるとは分かったがそれを手にするには宝くじに当たるほどの確率だとわかったことで頭を抱えてしまう。
そんな直人を見てレイシスは慌てて励ましだす。
「そ、そう落ち込まないでください直人様!直人様が頑張れば頑張るだけ私に力が戻ります!そうなれば確率やピックアップ対象をいじるくらい造作もないです!ですので直人様、私にご協力ください!お願いします!」
「ああ~……。わかった、わかった。どのみち戻れないんだろう?」
「はい!私も騙すような形で直人様を連れてきたことは反省しています。ですが直人様は必ず私がお守りしますのでどうかお力をお貸しください!」
メールの内容を最後まで読まなかった俺にも落ち度はあるわけだしそれに、低い確率であったとしても綾香の病を治療できるアイテムがあるのならむしろこちらからお願いしたいほどだ。
直人の選択肢は初めから決まってはいたがふと疑問に思ったことを口にする。
「そういえばあのメールにあった六つの質問、あれって結局どういう意図があったんだ?」
「あっ、あれはですね、直人様の意思確認のための質問でした」
「意思確認?」
「はい、さすがに縁があるとはいえ異世界に呼ぶには相手の意思確認が、こちらに来たいという意思が必要だったんです。ですのでああいった回りくどい方法を取らせていただいたんです。それと頭痛の件ですがごめんなさい、私自身結構
そう言って深々と頭を下げるレイシス。ただ体は小さく震えている。
さっきまでのハイテンションはなく申し訳なさそうに頭を下げている。
「はあ~そういうことか、いやもう過ぎたもんは仕方ないからこれからのことを話そう」
「それってもしかして……」
「手伝ってやるよ。どのみち薬が必要なことに変わりはないからな。こうなったら徹底的にやるぞ!」
「直人様~!!!」
「あっこら、くっつくな!てかどこで鼻水拭いてんだ、このくそ女神!」
直人の袖で鼻水を拭くレイシスを無理やり払い除ける。
それでもまだズビズビと女神がしてはいけないような顔で涙を流しているのでポケットからハンカチを取り出してレイシスの涙を拭ってあげる。
「お口は悪いでずが……ズズッ―――してくれることはとてもお優しいですよね、直人様って」
「うるせぇよ。ほらもういいか?」
「へへっ、はい!ありがとうございます、直人様!」
そうして笑顔で笑うレイシスの顔は確かに女神様だった。
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