第13話 石田三成との出会い
西暦1574年のある日。
秀吉は兵士をつれて鷹狩りに出掛けた。
秀吉「おれさ、もっともっと気が利く人になりたいんだよね」
兵士「というと?」
秀吉「そしたら信長さんにもっともっと気に入られて、もっと出世できるしょ」
兵士「ふむ」
秀吉「だからさ、ぜんぜん気が利かない人をそばにおこうと思って」
兵士「え、なんで?」
秀吉「そのほうが、おれの気が利くぶりが引き立つしょ」
兵士「ネガティブな努力ですね」
秀吉「ぜんぜん気が利かない人、どっかにいないかなぁ~」
兵士「どうでしょうね」
秀吉「あ、そうだ。兵士くん、今から気が利かないキャラになって」
兵士「いやですよ」
秀吉「兵士くんの人生、ちょっと台無しになっちゃうけど、お願い」
兵士「自分自身の気が利くぶりをパワーアップさせることを考えたほうがいいですよ」
秀吉「て言われても……」
兵士「まず心を鍛えることです。そうすれば心の機微が読めるようになります」
秀吉「心を鍛えるって?」
兵士「例えば、お茶の風流なムードを味わえる人間になるとか」
秀吉「いいね」
兵士「ちょうどあそこにお寺があります」
秀吉「ホントだ」
兵士「あのお寺で、熱いお茶でも味わって、風流レベルをアップさせて来たらいいじゃないですか」
秀吉「暑い日に熱いお茶を喫する。これぞ風流だね」
兵士「僕、ここで待ってますから」
秀吉「じゃあ、いってきまーす」
秀吉は近江の真言宗の寺をおとずれた。
秀吉「すいませーん。秀吉っていう者ですけど、ちょっと休憩させてください」
すると、寺で修行中の少年が出てきた。
少年「これはこれは。領主の秀吉さん。ささ、あがって。休んでください」
秀吉「お邪魔しまーす」
少年「今、お茶を入れますね」
秀吉「最高のをよろしくね~」
少年は台所にさがった。
台所で少年がなにを考えたかというと…
少年「今日は暑いから、秀吉さん、のどが渇いてるに違いない。よし、まずはポカリスエットなみに一気に飲み干せるように、ぬるいお茶を出そう。ふふふ、おれって気が利くなぁ」
そして……
少年「どうぞ。お茶です」
秀吉「ありがとう」
秀吉は、お茶を飲んだ。
秀吉 (心の声)なにこれ! ぬっるーっ!
少年 (心の声)驚いてる驚いてる。おれの機転に驚いてる。ふふふ。
秀吉 (心の声)熱いお茶を飲みたかったのに、なにこれ。
少年「もう一杯、いかがですか?」
秀吉「え、いや、もうけっこうです」
少年「遠慮せずに」
秀吉「いや、ホントにもう」
少年「今、入れてきますね。お待ちください」
少年は台所にさがった。
台所で少年が考えたことは……
少年「今ので秀吉さんののどは潤った。次は熱いお茶をゆっくり味わってもらおう。おれって気が利くなぁ」
そして……
少年「どうぞ。お茶です」
秀吉 (心の声)どうせぬるいんだろ。これも一気に飲み干してさっさと帰ろう。アチッ!
少年「いかがです?」
秀吉「あひっ、あひっ」
少年 (心の声)ふふふ。喜んでる喜んでる。
秀吉 (心の声)熱いお茶が欲しいときにぬるいお茶を出し、ぬるいお茶が欲しいときに熱いお茶をだすとは、なんて気が利かない少年なんだ!
少年「満足していただけましたか?」
秀吉「きみ、おれのもとで働かないか?」
少年 (心の声)やった! おれの才能が認められた!
秀吉「君みたいな人間をそばにおきたかったんだ」
少年「はい、よろこんで♪」
西暦1574年、寺の小僧だった少年は秀吉の部下になった。
少年、このとき14歳。
彼こそ、のちに徳川家康と関ヶ原で対決することになる石田三成である。
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