第5話 墨俣の一夜城

織田信長と柴田勝家の会話のつづき…




信長「で、サルを利用するって、どうするの?」


柴田「あいつを出世させます」


信長「え?」


柴田「足軽大将に抜擢するんです」


信長「なんで?」


柴田「サルが出世すれば、諸国の優秀な人物たちはこう思うはずです。『農民出身のサルでさえあの出世だ。おれが織田家に仕えればもっと出世できる!』と」


信長「なるほど」


柴田「こうして才能のある人材が集まってくるというわけですよ」


信長「よし、その作戦、採用!」




秀吉は『足軽大将』に出世した。

農民出身者としては異例の大出世だった。




ここは居酒屋。

秀吉は友達とお好み焼きを食べていた。


秀吉「あ、見て。お好み焼きの上のカツオ節…」


友達「?」


秀吉「動いてる! すげぇー動いてるぅぅぅ!」


友達「さっきからテンション高いね」


秀吉「え、わかる?」


友達「なんかいいことあったの?」


秀吉「じつはね、また出世したんだ」


友達「おめでとう。今度はなにに出世したの?」


秀吉「足軽大将」


友達「そこまでいったら、もう完璧に武士でしょ」


秀吉「うん。夢が叶ったよ。明日からジャンジャン働くから見てて」


友達「それで、なにか任務もらったの?」


秀吉「いや」


友達「じゃあ、働けないしょ」


秀吉「自分で考えて自分で行動する。これ大事でしょ」


友達「で、どう行動するの?」


秀吉「岐阜県を攻める」


友達「岐阜県?」


秀吉「今ってさ、戦国時代で、要するに領土の取り合いでしょ」


友達「うん」


秀吉「信長さんも新しい領土、欲しいと思うんだよね」


友達「そうだね」


秀吉「だから、となりの岐阜県を攻め取ろうと思って」


友達「なるほど。でもそれさ、一応、信長さんの許可もらってから実行したほうが、いいんじゃない?」


秀吉「その必要はないでしょ。自分の判断でやったほうが『行動力あるね~』って褒められるから」


友達「大丈夫かなぁ」




一方…


ここは織田信長の城。


信長「さて、柴田」


柴田「はい」


信長「今は戦国時代なわけなんだが…」


柴田「そうですね」


信長「要するに領土の取り合いだよね」


柴田「はい」


信長「まずどこを攻めたらいいかな?」


柴田「まだです」


信長「ん?」


柴田「まだどこにも攻め込むべきじゃありません」


信長「そうなの?」


柴田「今は周辺諸国と仲良くして国力を蓄える時期です」


信長「おお、そうか」


柴田「とくに岐阜県の斉藤さんとは仲良くしてください」


信長「了解」


柴田「斉藤さんは百戦錬磨の武将ですから、敵に回すと厄介です」


信長「大丈夫。斉藤さんは親戚だから」


信長は十数年前に、斉藤一族の娘・帰蝶(濃姫)を嫁にもらっていた。




その頃、秀吉は……


秀吉「兵士くん」


兵士「はい、大将」


秀吉「今から岐阜県を攻めるから、ついて来てね」


兵士「でも岐阜県の斉藤さんは強いですよ」


秀吉「心配ないよ。いい作戦があるんだ」


兵士「いい作戦って?」


秀吉「斉藤さんの領土内にこっそり城をつくるの」


兵士「城を!?」


秀吉「うん。おれたちの城を」


兵士「大胆ですね」


秀吉「その城を足がかりにしてガンガン暴れ回れば、きっと勝てるよ」


兵士「でも、敵の領土内に城をつくるなんて、無理じゃないですか?」


秀吉「こっそりやれば大丈夫」




秀吉は岐阜県の斉藤氏を攻略するため、城をつくりはじめた。


当然、斉藤一族はそれに気づいた。




斉藤一族1「わっ。あれ見て」


斉藤一族2「なに?」


斉藤一族1「あそこで誰か勝手に城つくってるよ」


斉藤一族2「ホントだ。うちの領土に!」


斉藤一族1「追い払う?」


斉藤一族2「いや、待って」


斉藤一族1「?」


斉藤一族2「あれ、よく見たら愛知県の織田さんとこの兵士じゃない?」


斉藤一族1「あ、ホントだ」


斉藤一族2「織田さんは親戚だよね?」


斉藤一族1「うん、親戚だね。仲間だ」


斉藤一族2「じゃあ、とやかく言わなくてもいいか」


斉藤一族1「そうだね」


斉藤一族2「こんな時代だから、親戚同士、仲良く助け合っていかないとね」


斉藤一族1「うん」




秀吉の城は完成した。


これが有名な『墨俣の一夜城』である。




秀吉「さっそく斉藤さんに宣戦布告だ!」


兵士「はい!」




その翌日。


ここは愛知県、織田信長の城。


信長は家臣の柴田勝家を呼んで言った。




信長「さて、柴田」


柴田「はい」


信長「ぜひ斉藤さんと親睦を深めたいわけなんだが…」


柴田「そうですね」


信長「どうしたらいいかな?」


柴田「斉藤さんをディナーに招待しましょう」


信長「じゃあ、サルに接待の準備をさせよう」




信長は秀吉を呼びつけた。




信長「おーい、サル」


秀吉「はい」


信長「任務を与える。斉藤さんのことなんだけど…」


秀吉「それなら、すでに手は打ってあります」


信長「お、気が利くね」


秀吉「斉藤さんの領土内に、すでに城をつくりました」


信長「え!?」


秀吉「先手必勝ですからね。こっちからケンカを売ってやりましたよ」


信長 なに―(゚∀゚)――!




こうして、織田家(愛知県)と斉藤家(岐阜県)の全面戦争がはじまった。




つづく

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