第4話 桶狭間の戦い

西暦1560年5月19日の未明。

織田信長は家来を集めてミーティングを開いた。

その輪の中に秀吉の姿もあった。




信長「みんな、聞いてくれ。今川義元の大軍が攻めてきた」


秀吉 眠い……(心の声)


信長「敵の数は3万人。こっちは2500人」


秀吉 ねむてー(心の声)


信長「でも恐れることはない、なぜなら、」


秀吉 話、なげー(心の声)


信長「敵が何人いようが、大将の今川義元ひとりを討てば勝てるからだ」


秀吉 ちょっと寝ちゃおうかな(心の声)


信長「ベストを尽くして戦おう」


秀吉 (〃´o`) おやすみ~(心の声)


信長「出陣だ!」


秀吉 (-_-)zzz すやすや




30分後…


秀吉は目覚めた。




秀吉「はっ。やべっ。寝てた」


召使「あ、秀吉さん、お目覚めですか」


秀吉「君は?」


召使「織田家の召使です」


秀吉「誰もいないみたいだけど、みんなはどこに行ったの?」


召使「とっくに出陣しましたよ」


秀吉「えーっ。おれもすぐ行かないと!」





一方、さきほど出陣した織田信長たちは…





信長「今川義元ひとりを討てば勝てる!って言ったはいいけどさ、肝心の今川義元、どこにいるんだろうね」


柴田「正確な位置がわかれば、そこを集中攻撃できるんですけどね」





その頃、今川義元は…





今川「ここ、見晴らしがいいね」


兵士「桶狭間山です」


今川「ちょっと休憩しようか」


兵士「そうですね」


今川「ん? むこうから誰か走ってくるよ」


兵士「本当だ。誰でしょうね」





それは秀吉だった。





秀吉「すいませーん」


今川「?」


秀吉「遅れてすいません。寝てました」


今川「は?」


秀吉「ミーティング中にうとうとして、気づいたら誰もいなくて」


今川「なんの話?」


秀吉「あわてて飛び出してきましたよ。合流できてよかった~」


今川「君の顔、どっかで見たことあるなぁ。名前は?」


秀吉「秀吉です」


今川「ああ、思い出した。秀吉ね」


秀吉「はい」


今川「たしか、松下加兵衛のところでバイトしてるんだよね、今」


秀吉「え?」


今川「違ったっけ?」




今川義元は、秀吉が松下加兵衛のもとを去って、今は織田家に仕えていることを知らない。




秀吉「それは昔の話じゃないですか」


今川「辞めたの? 松下んとこ」


秀吉「冗談ばっかり。もー」


今川「え、ごめん。ちょっと話が見えないかも」


秀吉「ところで、信長さんはどこです?」


今川「まだどこにいるか、わからないんだ」


秀吉「え、あなたたちもはぐれたんすか?」


今川「はぐれた?」


秀吉「ていうか、あなたの顔、今川義元に似てません?」


今川「は?」


秀吉「あ、似てるー。すげーウケる。やたら似てるぅー」


今川「……」


秀吉「ほら、ちょっと横向いて。この角度、めちゃくちゃそっくり!」


今川「おれ、今川義元です」


秀吉「なにそれ、モノマネ? モノマネ?」


今川「いや、マジで今川義元です」


秀吉「似てる、うまい!」


今川「……」




秀吉は今、たったひとりで敵陣にいる。

しかし、本人は気づいていなかった。




秀吉「モノマネうまいね~」


今川「いや、モノマネじゃないし…」


秀吉「誰が見てもだまされるよ。本物の今川義元だと思っちゃうもん」


今川「そりゃそうだよ、だって…」


秀吉「信長さんも、だまされるかな?」


今川「え?」


秀吉「試してみよう」


今川「ちょっと、どこに電話するの?」




秀吉は信長に電話をした。




秀吉「もしもし。秀吉です」


信長「あ、サル。この忙しいときに何やってるのさ」


秀吉「面白いもの見せてあげますよ」


信長「面白いもの?」


秀吉「今、僕のとなりに今川義元がいるんですよ」


信長「はぁ?」


秀吉「今川義元」


信長「ほんと!?」


秀吉「はい」


信長「今、どこ?」


秀吉「場所は……」




秀吉は現在位置を説明し、電話を切った。




秀吉「ふふふ。信長さん、来るって」


今川「来るの!?」


秀吉「どこまでだませるかな。今川義元で通してね」


今川「当たり前でしょ。だっておれ本物だもん」


秀吉「そうそう、その調子」


今川「あ、むこうから軍勢が!」


秀吉「信長さんだ♪」




西暦1560年5月19日。


織田信長は今川義元の本陣の位置をつかみ、そこに戦力を集中的に投入して勝利した。(桶狭間の戦い)




全国の戦国武将のリアクションは……


戦国武将1「今川義元がやられたらしい!」


戦国武将2「うそぉ!? 今川義元ってかなり強い武将だよね? 誰にやられたの?」


戦国武将1「織田信長っていう人」


戦国武将2「聞いたことないね。どこの人さ?」


戦国武将1「愛知県」


戦国武将2「何歳?」


戦国武将1「若いよ。25、6歳」


戦国武将2「えっ。そんなに若いのに、名門の今川義元をやっつけちゃったの?」


戦国武将1「そう」


戦国武将2「生意気だね」


戦国武将1「うん。生意気だね。これから要注意だよ」




こうして織田信長の名が歴史に登場した。




ここは愛知県。織田信長の屋敷。


信長「おれ、全国デビューしたね~」


柴田「しましたね」


信長「鮮烈に歴史に登場したね~」


柴田「でも、ひとつ困ったことが…」


信長「?」


柴田「全国の戦国武将が『信長は生意気』説を唱えています」


信長「まぁいいじゃん。言わせておけば」


柴田「でもこのままだと袋叩きにあいますよ」


信長「じゃあ、どうすりゃいいのさ?」


柴田「優秀な人材を募集して、戦力を固めるべきです」


信長「優秀な人材がおれみたいな一発屋のところに来てくれるかな…」


柴田「大丈夫です」


信長「というと?」


柴田「サルを利用するんですよ」


信長「あいつ、優秀な人材なの?」


柴田「いえ、サルはぜんぜん優秀じゃないですが、あいつを都合よく利用させてもらいます。ふふふ」


信長「出たね、悪者の笑い方」


柴田「はい。これも織田家のためです。ふふふふ」




秀吉は、織田家の陰謀に巻き込まれてゆく。



つづく

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