第3話

夏姫とのお泊り会も終わり、花火大会の日がやって来た。

「お母さん、急いでよ。夏姫が待っているじゃん」

「あんたが急がないからでしょ。はい、できたよ」

 お母さんに浴衣を着せてもらい、外に出た。

「ごめん、夏姫。待った?」

「待ってないよ。ちょうど涼太くんと話していたから」

 夏姫は髪を後ろで束ねていて、水色の浴衣を着ていた。

 その隣に私服姿の涼太がいた。

「待ち合わせ場所に行く途中で会った」

 なんかもやもやする。

 この前もあった、芽生えちゃいけない感情がどんどん大きくなっていく感じ。

「今から人が混むと思うから行こ、二人とも」

 夏姫に言われ、歩き始めたがなかなか収まらなかった。

 花火が始まるまでの時間で三人で屋台を回って、涼太が射的で結構当たってびっくりした。

 本人曰く、ゲームしてたらこんなん簡単って言ってた。

「なんか食べ物買ってこようか?」

 もうすぐ、花火が始まろうとするところで花火がよく見える場所へ移動した。

「涼太の奢り?」

「なわけ。後で金はもらう」

「けちじゃん。それじゃあ、焼きそば」

「私はたこ焼き頼んでもいい?」

 涼太は財布を持って、人をかき分けながら屋台の方へ走って行った。

 二人で星空を見上げて少し話していた。

「鈴、大事な話してもいい?」

 夏姫は私の目の高さまで合わせてくれた。

 いつにたっても真剣な表情だった。

「どうしたの?改まって」

 夏姫は何度か深呼吸をした。

 もやもやが広がっていく感覚。気持ち悪い。

「鈴にはずっと言わないといけないって思っていたの。私ね、涼太くんのことが好きなの」

 花火があがった。

目の前が真っ暗になった。

 夏姫は満面の笑みだった。その笑みは花火のように輝いていた。

 そこからは何も覚えてない。

 ただ一つだけ覚えていることがある。

 夏姫の笑顔だった。

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