第2話

「夏姫ちゃん、いらっしゃい」

 お母さんの声がいつもより高い。

「お邪魔します」

 夏姫の黒い髪が下へ垂れ下がった。

「夏姫、いらっしゃい!」

 笑って、手を振ってくれた。可愛い。

 今日から一泊二日の夏姫とのお泊り会。

 夏姫とゲームしたり、ご飯食べたりして夜中まで時間を潰した。

「ごめん鈴、部屋着忘れた。貸してくれない?」

 夏姫はクローゼットの方へ向かった。

 ダメ。そっちは!!

 夏姫の腕を掴んだ。これ以上掴んだら、折れそうなくらい強く。

「どうしたの」

「風呂入ってきて、入っているときに持って行くから」

 夏姫はキョトンとして、風呂場に向かった。

「危なかった」

 夏姫が部屋から出ていったことを確認して、クローゼットを開けた。

「これを見られたら終わりだな」

 隠し撮りした夏姫の写真が壁中に張ってあった。

 これを見られて絶交って言われたら、私死ぬな。

 部屋着を持って風呂場に向かうと夏姫は鼻歌を歌っていた。

 夏姫が風呂から上がり私も風呂から上がってからはお喋りをしていた。

「それじゃあ、保冷剤もってくるから少し待ってて」

 風呂で夏姫が歌っていた鼻歌うたいなが下へ降りていった。

「保冷剤どこだっけ…」

 あった。とりあえず、いっぱいもっていこう。

 両手いっぱいに保冷剤を抱え部屋に持っていった。

「ただいま。いっぱい持ってきたよ」

 夏姫は手に何かを持っていた。

「鈴、そこに座って」

 私は、保冷剤を耳に当てて夏姫の目の前に座った。

「鈴、もうすぐ誕生日でしょ。だからこれあげる」

 夏姫から小さい包み紙をもらった。

 中身を開けると椿の形をしたピアスが入っていた。

「椿ってピンクみたいな色なのになんで緑なの」

 夏姫はピアスを手にとって言った。

「このピアス二つでしょ。私たちは二人で一つって周りから思われたいんだよね。それに、椿は鈴が好きだし、緑は私が好きだから」

 夏姫は苦笑いした。

 後半の話なんかあまり頭に入ってこなかった。

 夏姫が「二人で一つ」って言ってくれたことがもう、嬉しいくれたまらない。

「夏姫!」

 夏姫を壊れるくらい抱きしめた。

「私もそう思ってた!めっちゃ嬉しい」

「苦しいよ、鈴」

 夏姫から離れると、ニコニコしながらピアッサーを持っていた。

「待って、今から開けるの?!」

「耳は十分冷えたでしょ、どうせ開けるんだから」

 夏姫に椅子に座らされて、開けられた。

 私も夏姫の耳に開けて、もらったピアスをつけた。

「痛い?」

「そこまで痛くないよ、保冷剤最強だわ」

 夏姫はクマのぬいぐるみを顔の前まで持ってきて、聞いてきた。

 可愛いかよ。

「んじゃ、寝ようか」

 夏姫は床に布団をひいて横になった。

「鈴もおいでよ、一緒に寝よ」

 私は夏姫のいる布団の中に入った。

 夏姫の寝顔を見た。

 整った顔つき、長い黒髪、ニキビ1つ無い肌。

 愛おしい。

 私の夏姫。誰にも渡したくないし、汚されたくない。

「大好きだよ、夏姫」

 夏姫に聞こえないくらいの声で夏姫に向かって言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る