過去語り①
食べ終わった食器を洗って、選択者をソフィーに任せた俺は2階の掃除機をかけた後、1階まで降りて、開店の準備を始めた。
元々は祖父がやってた喫茶店に小説や雑誌など様々な書籍を置いてお客さんに満足してもらおうとブックカフェを始めた。
「うっし! 今日も頑張りますか」
俺は外に出て店の周りを掃きながら気合を入れた。
掃除しながらで申し訳ないが俺について少し語っておこうと思う。
俺は元々この世界の住人ではない、“アーヴェイロン”と呼ばれる異世界からやってきた。 その世界では今の世界とは違い、中世のヨーロッパのような世界と思ってほしい。
違う点を挙げるとすれば魔法や加護、職業が存在し、エルフやドワーフ、獣人に魔族など様々な種族がいる、そんな世界だ。
そんな世界で俺はある村の村人として生きていた。 最初のころは家族の仲もよく周囲とも喧嘩はすれどそこまでひどいことはなかった。 しかしそれも弟と妹が生まれたことで一変した。 二人が生まれてからは家族も村の人も俺を迫害し始めたのだ。
原因はわからない、何らかの加護か?魔法なのか? それでも二人が生まれたことで俺の人生は一変した。 愛されている2人に代わって俺は家族からの罵倒や暴力、飯抜きなんて当たり前だった。 というか、家のことをすべて俺に押し付けてうまくできなかった殴られる蹴られるは当たり前だった。 それだけじゃない村の人からは石を投げられたり罵倒を浴びたり、当時まだ7歳の俺に一歩間違えれば死ぬんじゃないかといった仕事を押し付けたりした。 もちろん給与はすべて家族に奪われていた。
それだけじゃない村周りの場所でも周囲の人から汚物のような目で見られたり、見下されたり、不条理な暴力を受けたりと今にして思えばひどい目にあっていたもんだ。
そんな俺にも転機が訪れた。 それは王国からの使者が村にやってきたのだ。 突然の訪問に村に住んでいた連中はお祭り騒ぎであった。 そんな連中に対し、使者は勇者として俺を迎えに来たということであった。 それを聞いた連中はといえばさらに浮かれていた。
そして翌日使者は俺を連れて往生に向けて出発した。 その時の連中はがんばれだのなんだの言っていたが今にして思えば厄介者をようやく追い出すことができたと思えたのだろう。
当時の俺はみんなから褒められる、頑張ろう!という意気込みだったが、この後、俺の心は砕かれる事態になったのであった。
「おっといかんいかん。 そろそろ準備しないと開店遅れるわ」
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