異世界からやってきた元勇者の日常
ken
プロローグ
いつも見てしまう夢がある。 家族や周りの人々からの冷たい目や罵倒に晒されながらも一人の少年が何もない砂利道を歩く。 ふとしたところで止まると誰かの高笑いと共に瓦礫が降り注ぎ、足元にポッカリと大きな穴があいた。 少年は穴のヘリに手をかけて落ちないようにしているが頭上から誰かが見下ろしている。 聞くに耐えない罵詈雑言の後に一言「お前なんて誰も必要としてないんだよ」と言うとにやけながら手に持ってた剣を振り下ろし少年を穴のそこに落とした。
落ちてしばらくしてから俺は夢から目を覚ます。
「・・・・・またあの夢か」
体を起こして、頭をポリポリとかきながらベッドから出る。 窓のところまで歩いてカーテンを開けるとか少し薄暗いがいつもの光景が目の前に広がる。
東京のとある場所に今俺は住んでいる。 自宅は2階建ての一軒家だが一階はブックカフェをやっている。 周りは古本屋や大学のキャンパス、大きなビルなど色々なお店やオフィスが軒並み並んでいる。
少しの柔軟体操の後、居間の方に行って朝ごはんの準備を始めた。 昔はご飯を作ると思うと(ちゃんと作らなきゃ、まずいの作ったら殴られる!)って感じていたが今ではそんなことを一切気にせずただ無心に作っていた。 作りながらテレビから流れるニュースを聞いて今日の天気やトピックを調べていく。
そんなことを思いながら白ご飯に納豆、焼き鮭、みそ汁を準備してテレビを見ているとそろそろ同居人を起こす時間になってきた。
「おーい。 そろそろ起きろぉ」
一言添えて戸を叩くが返事はなし、まだ寝ているようだ。 俺は意を決して戸を開けて彼女の部屋に入った。 部屋全体はぬいぐるみや本が散乱しているが基本的に女の子の部屋というイメージだろうか? そんな部屋の窓際のベッドに1人抱き枕を抱いている女の子が寝ている。
「お~~い、そろそろ起きなさーい」
そう言いながら体を揺らすが起きる気配はない。 この同居人は朝に弱い、だから朝起こすのにも一苦労なのだ。
しばらく体を揺らして起こしていると、彼女から一言「あと五分・・・・」とテンプレートの一言が飛び出てきた。
「五分って・・・・・んなベタな、そんなに起きるのが嫌なら朝ごはん俺が全部喰っちゃおうかなぁ?」
俺がそう言うと彼女は目をかっ!と開けてベッドから飛び降りてきた。 黒の長い髪に整った美人顔、プロポーションもとても綺麗で世の男性が全員彼女をみて2度見すること間違いなし。 ただ普通の女性と違うのは頭から羊のような黒い角が生えていることだ。
「そんな非道ができるなんて! おのれ勇者!!」
「嘘だよ、ほれはよ着替えて」
「嘘でもひどい!」
「起きないお前が悪い、まぁ起きたからいっか・・・・、おはよソフィー」
「・・・・・・おはよう大和」
今まではこんな日常を送るなんて夢のまた夢だと思っていた、でもこの世界でようやくささやかながら最高の幸せを手に入れることができた。
そんなことを思いながら俺とソフィーはテーブルをはさんで手を合わせて「いただきます」といってご飯を食べ始めた。
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