久しぶりに夢を見た。猫を飼う夢だった。仕事が忙しくて、とてもお世話できる環境ではないため動画を見て我慢する毎日だったのだが。ついには夢に見る始末。



はぁ。こんな状況で飼える訳ないのに。でも、夢でくらい許されてもいいよね。さて、仕事の準備…っと。



そう考えながら上体を起こすと、膝に重みを感じた。酒が抜けていないのか?でもそんなにたくさんは飲んでないんだけどな、と足元に目を見やると




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」





見知らぬ男が私の膝を枕にしてうずくまって寝ていたのだ。


ひとしきり叫んだ後、私は急に近所迷惑になったことを悔やんだ。


ごめんなさいお隣さん!!!でも、朝起きて見知らぬ男が私の膝枕で寝ている状況で、冷静になれる人間がどれほどいるだろうか。


それによく見ると男は全裸なのではないか?私のバスタオルを何故かかけて寝ており、全貌は見えないのだが、いや直視できず確認もままならないのだが、そんな状況になったことがなく狼狽えることしかできない。



あれだけの音量で叫んだというのに、男はいまだにすやすやと眠っている。




どうしよう。どうしよう、どうしよう。




数分悩んだ末に声をかけてみることにした。



「あ、あの…起きてください、どちら様ですか…?」


軽く肩を揺すると、男はのっそりと身体を起こした。




「・・・・・・。」


「・・・・・・・。」




なんか言えよーーーーー!!!!


男はは何をいうでもなく、こちらに目線をやることもなく、ただ眠たそうに目をしぱしぱさせている。



ふと、首元を見ると、見たことのあるようなチョーカーをつけていた。

…これって————




「……ルナ?」



私はつい夢で出会った猫につけた名前を口にしていた。男がつけているチョーカー、グレーのふわふわした髪の毛、少年というには成熟しているけども、成人しているとは言い難いような幼さを感じる風貌。そして眠そうにしているその瞳は、琥珀色に輝いていた。


まさか。そんなまさか。



猫を拾ったのは夢ではなかったにしろ、流石に男の人と猫を間違えるわけがない。それに男が体にかけているタオルは私が昨日猫を洗った時に使ったものだ。


もしや、ルナの飼い主?猫は飼い主に似るというのを聞いたことがある。捨てたことを後悔して、GPS機能のついた首輪を追って取り戻しにきたのかもしれない。


こんななんの環境も整っていない家よりも、元の飼い主のところに戻った方がルナもきっと幸せだ。そう思い、後ろ髪を引かれながらルナを探した。




「ルナー。出ておいで、お迎えが来たみたいだよ。」



「…お迎え?お迎えって何…?」


私の呼びかけについに男が反応した。



「何って…ルナ、じゃなくて、グレー色のねこちゃんを取り戻しに来たんですよね・・・?」


「・・・?」


男はまだ寝ぼけているのか、はっきりした返答がない。とにかく何故全裸なのか分からないし怖いし早くルナを見つけて追い出さないと。早く出てきてよ・・・!



「ルナちゃーーーん」


「はい。」




はい?返事をしたのは全裸の男だった。

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