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 さて、どうしようか。猫を飼ったことがないし、猫ちゃんを家に一人にして仕事に行くにしても、ご飯もトイレも用意できていないし、安全対策だってできていない。


 この時間だとペット用品の取り扱いがあるお店はもうしまっているし、明日も定時で帰ることなんで出来なさそうだ。


 病院も連れて行かなきゃ行けないし、里親を探す・・・?いや、頼れそうな相手もいないしそもそも受け渡すタイミングもない。



 軽率に連れてきてしまったが、どうしたものか。



 そうこう悩んでいるうちに、猫はカニカマを食べ終え前足をシャリシャリと舐めて綺麗にしている。


 ふう、とため息をつくと、自分もお腹もぐ〜と音を立て、まだ何も食べていなかったことを思い出す。とりあえず飲むか・・・と、冷蔵庫に入れ忘れていたぬるいビールを、カニカマと一緒に飼った漬物とサバの味噌煮缶と一緒にちまちまと口に運んだ。






 私はお酒がめっぽう弱い。


 350ccの缶ビールを飲み干す頃には、なんだか頭がふわふわしていてとても心地が良くなってしまう。いつもはこの調子で猫の癒し動画を眺めながら寝る準備をだらだらと進め、気が付けば朝を迎えているのだ。



 しかし、今日は画面の中ではなく目の前に可愛らしい猫が佇んでいる。



 動画とは違って、ねこちゃ〜んなんて呼んでも反応はなく、自由気ままに過ごしている。なんとも本物らしい。



 あの動画のように、もふもふとしたお腹をどうにか触れせてはくれないだろうか。。。そう考えながら一生懸命「ねこちゃん」と呼ぶものの、一向にこちらに興味を持ってくれない。



 そうだ、まずは名前をつけようか。


 みんな、ペットの名前はどうやってつけるのだろうか。好きな食べ物?見た目の特徴?この子にぴったりな名前はなんだろうか。




 ぽやぽやとした頭を一生懸命働かせて、ふと思いついたのは





「ルナ・・・」



 満月のように丸く綺麗な瞳を見てパッと思い浮かんだ名前。口にするとなんだか前からそんな名前だったのではないかと思うくらいピッタリなきがしてくる。



「ルナ、おいで。」


 呂律の回らない私の声に、猫は無言でこちらに歩み寄り、ぐるぐると喉を鳴らした。そうか、ルナ。気に入ってくれたか。私はその小さな頭を撫で、吸い込まれるように背中から腰までを撫でる。ルナがオスだったとしてもメスだったとしても、とても似合う名前だ。



「決まり。君の名前はルナ!かわいい〜〜〜!!」


 そうだ、一緒に暮らすなら、首輪をつけてあげなくっちゃ。ルナにとっては窮屈かもしれないけど。そう思った時、段ボールの中に首輪も一緒に入っていたことを思い出した。


 ルナが自分で取ったのか、前の飼い主の思い入れのある首輪なのかはわからないが、いなくなった時の目印になるため一旦つけておくことにしよう。




 明日はルナのご飯とトイレと新しい首輪を買ってー…。花瓶とか危ないものも片付けて・・・・などと考えながら首輪をつけているうちに強烈な睡魔に襲われ、私はそのまま夢の中に堕ちていった。


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