なおる力

ヤマシタ アキヒロ

第1話

  なおる力



「ケガしたところ、かたまっちゃったね」


そうたくんは自分のひざ小僧をのぞきながら、ふしぎそうにいいました。


それは一しゅうかんほどまえ、派手にころんですりむいた傷のかさぶただったのです。そうたくんは大泣きしたことを思い出しました。


お母さんはほほえみながらいいました。


「にんげんのからだには『治る力』があるのよ。そうちゃんがお肉を食べたり、にんじんを食べたり、牛乳やスープを飲んだりするのが、ケガをなおす力になるの」


「ふーん」


そうたくんは少し考えてからいいました。


「それならにんげんのココロにも『なおる力』があるのかな」


「どうして?」


こんどはお母さんがふしぎそうにたずねました。


そうたくんは目をキラキラさせていいました。


「だって、昨日ゆうきくんとケンカして、とっても悲しかったのに、今日はなんだか元気に遊べたもの」


お母さんは目に涙を浮かべながらいいました。


「そうね、ココロにも『治る力』がありそうね」


「お母さん」そうたくんはまたいいました。


「なにを食べれば、ココロの傷は早くなおるかな?」


お母さんは肘に手を当てて考えました。そしてこういったのです。


「きっとね、そうちゃんが、おはようって元気にあいさつしたり、お絵かきをしたり、先生とお話したりすることが、いつのまにかココロの栄養になっているのよ」


「ふーん」


そうたくんは何かを考えていましたが、やがてにんまり笑顔になりました。


                          (了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

なおる力 ヤマシタ アキヒロ @09063499480

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ