なおる力
ヤマシタ アキヒロ
第1話
なおる力
「ケガしたところ、かたまっちゃったね」
そうたくんは自分のひざ小僧をのぞきながら、ふしぎそうにいいました。
それは一しゅうかんほどまえ、派手にころんですりむいた傷のかさぶただったのです。そうたくんは大泣きしたことを思い出しました。
お母さんはほほえみながらいいました。
「にんげんのからだには『治る力』があるのよ。そうちゃんがお肉を食べたり、にんじんを食べたり、牛乳やスープを飲んだりするのが、ケガをなおす力になるの」
「ふーん」
そうたくんは少し考えてからいいました。
「それならにんげんのココロにも『なおる力』があるのかな」
「どうして?」
こんどはお母さんがふしぎそうにたずねました。
そうたくんは目をキラキラさせていいました。
「だって、昨日ゆうきくんとケンカして、とっても悲しかったのに、今日はなんだか元気に遊べたもの」
お母さんは目に涙を浮かべながらいいました。
「そうね、ココロにも『治る力』がありそうね」
「お母さん」そうたくんはまたいいました。
「なにを食べれば、ココロの傷は早くなおるかな?」
お母さんは肘に手を当てて考えました。そしてこういったのです。
「きっとね、そうちゃんが、おはようって元気にあいさつしたり、お絵かきをしたり、先生とお話したりすることが、いつのまにかココロの栄養になっているのよ」
「ふーん」
そうたくんは何かを考えていましたが、やがてにんまり笑顔になりました。
(了)
なおる力 ヤマシタ アキヒロ @09063499480
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます