夢をあなたにお届け
魔女と関わったからなのか、俺が見る夢はどこかリアルだ。
それが夢だと理解出来るのもそうだけど、この夢に関しては予めこういう夢を見ると予告されているのも大きい。
「とはいえ……なんでこんなことになったんだか」
「刀祢君、どうしたのですか?」
「お父さんさぁ、もう諦めなよ~」
目の前に、はだけたメイド服を着た莉愛さんと世那さんが居る。
そして……そんな彼女たちの真ん中には、同じような格好で俺を見つめる亞里亞さんも居た。
「あなたの一番は私だけれど、この子たちの気持ちが分からないでもないのよね。だから夢の中くらいは許してあげようと思ったのよ」
もう夢に出てくる人が夢の中って言っちゃってるもんな。
俺が思い出すのは西園寺家で夕飯を食べた後の会話だ。
『そういえば刀祢。あなた私があの彼に見せた夢に興味を持ったって話を聞いたわよ?』
全てはその一言から始まった。
彼とは翔のことで、その翔が心を完全に治す薬になったハーレムの夢に関してのことだった。
興味……そりゃ持つに決まっている。
男とはハーレムに憧れるもの……もちろん全員が全員そうではないが、少なくとも現実ではほぼほぼあり得ることがないからこそそのことが気になってしまった。
『少しだけですよ……?』
『なら、見てみる?』
『良いじゃん! お父さん見てみなよ!』
『私も協力しますよ♪』
そんな悪魔たちの囁きに俺は期待を抱いてしまった……その問いかけに頷いてしまったのだ。
そうして西園寺家から自分の家の戻り、急激に眠くなったのでちょうど良かった――そうして眠りに就き、おそらくは夢の中だと思われる場所で覚醒し、こういう状況になっているというわけだ。
(翔が言ってたリアル感……確かにこりゃ凄いや)
正直、何が夢で現実なのか……その違いが全く分からない。
だから今のこの瞬間にこれは夢ではなく現実だと言われても、俺はそうなのかと納得出来てしまいそうだ。
「その……夢なんですよね?」
そう問いかけると、彼女たち三人は頷いた。
夢……夢であれば何をしたところで大丈夫だし、俺にとって悪いことは何一つ起こらない。
夢は所詮夢……現実との繋がりはなく、あくまで妄想の域でしかないのだから。
「おいでよお父さん」
「来てください刀祢君」
「いくぅ!!」
そこからの俺は早かった。
これは夢……そう自分に言い聞かせながら寝そべる三人の中へと飛び込んだ。飛び込むと言っても怪我の可能性を考えてゆっくりとだが、確実に俺は彼女たちの中へと入り込んだ。
「……おぉ」
それは、思わず情けない声が出てしまうほどだった。
横になった瞬間、体に纏わりつく三人の美女……亞里亞さんの姿にドキドキするのはもちろん、世那さんと莉愛さんにも心臓がうるさいほどにバクバクしている。
(前世での奥さんと娘……孫に迫られるって中々罪深いな)
現実でも迫られている自覚はある……でも流石に、亞里亞さんが居る手前ねぇ?
とっても魅力的だし、普通の人間ではない魔女との生活と考えれば受け入れられないことはない……というか、受け入れた方がもっと素晴らしい日々を送れる気がしてならない。
それでもそうしないのはまだ、そう言うことに勇気が持てないから。
「魔法を掛けてあげる――この夢の中では、私たちは決して疲れることもなければ眠る必要さえない。刀祢、きっと明日の朝は素晴らしい目覚めになるはずよ」
「そうなりそうですね……だってこんな――」
そう言おうとしたところで世那さんに唇を塞がれた。
続いて莉愛さんにもキスをされ……そしてトドメに亞里亞さんにもキスをされた。
彼女たちの感触や温もりの全てが現実と何ら変わらない。でもこれこそが魔女が見せる魔法の夢……決して人間が見ることを許されない限りなく現実に近い素晴らしい夢。
「こんなハーレムみたいな夢……アニメとか漫画の世界でしかないと思ってた。まあ夢だから現実ではないんだけど、それでもこんな風にリアルに感じられるなんて凄すぎる」
「何でもお願いして良いわよ?」
「刀祢君のためならなんだってします!」
「あ、じゃあ三人にやってほしいことが――」
そこからはもう、最高に至福の時間だった。
亞里亞さんと世那さん、莉愛さんにとことん愛されながら時間は無限に続いてほしいと考えてしまうほどだ。
夢だからこそ何をしても良い……別に酷いことはしてないけど、現実なら守らないといけないラインを守らなかった。要するにゴムなんてものは必要がなかったわけだ!
「……ふぅ!」
そして今、俺たちは凄い恰好でベッドの上に寝転がっている。
「刀祢君……幸せですぅ♪」
「私もお父さんと……ふふっ♪」
「全くこの子たちは……まあでも、これで刀祢も本当の意味で魔女の家に囚われたわね――確実にデキるだろうし、魔法でその進行だけは止めておくとして後は……」
もう何が聞こえてきてもオルゴールの音楽にしか聞こえてこない。
それくらいに俺は良い気分だった……そうして目を閉じ、俺は次の日を迎えるのだった。
「……あれ?」
【あとがき】
次で終わりです!
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