赤裸々に
「これは……」
俺は……何をしていたんだっけ。
そう思ったのは酷く頭がボーッとしているから……だが段々と思い出せてきた。
俺は確か……そう!
亞里亞さんと繋がったんだった……ほとんどあの人にリードされるがままで、俺はマグロのようにジッとしていたわけだけど……亞里亞さんのリードは本当に凄かった。
どこが良くて、何が良いのかを全部理解されてて……とにかく凄い時間を過ごすことが出来た。
「……でもこれは――」
そんな俺が見ているのはおそらく夢……また前世の夢と思われる。
どこか分からないベンチに座り、肩を寄せ合っているのは前世の俺と亞里亞さんだった。
二人とも大人の姿をしていることから間違いなくそうだと言える。
『魔女に魅入られた者は離れることが出来ない……ねぇ。俺からすれば嬉しいことこの上ないんだが』
『あなたくらいなものよ? そこまで魔女を愛してくれるのは』
『好きになった相手が魔女だっただけの話だろ。仮に君が口裂け女とか雪女とか、そういう類の存在でも俺は好きになってたと思う』
『ふふっ、雪女はともかく口裂け女は嫌ね。あなたが良いと言っても顔を見られたくないと思うから』
相変わらず前世の俺たちは仲睦まじいらしい。
見ていて恥ずかしくはなるものの、こんな風に一人の女性をどこまでも愛そうとする姿は勉強になるというか、大事なことなんだなと強く思わずにはいられない。
『正直……君との時間は夢のようにも思うよ』
『どういうこと?』
『だって俺は、どこまでも普通の人間だからな。いつかは誰かと付き合って、結婚するんだろうなくらいしか考えてなかった……それか、誰とも結婚することなく独身なんだろうなってのも頭の片隅で考えてた。言ってしまうと君みたいな素敵な人に会える可能性を一切考えてなかったんだ』
『あなたは素敵な人よ? それは流石に自信なさすぎじゃない?』
『いやいや、これは間違ってないと思う。俺は亞里亞のことがとにかく好きで、君が魔女だと知ったところから関係が始まって……たまたま俺の一途な気持ちとか君限定でエロいことが好きとか……そういうのが君の好みに合致した結果だからな』
いや、それが互いに一致したから付き合うことになったんじゃ?
かつての俺に対してそう言いたくなったけど、確かにずっと出会いがなくて独身のままというのもあり得ない話じゃない。
亞里亞さんは魔女であり、普通の人間ではない――たとえそんな特異な人であっても、こんな風に愛し合える人に出会えたのは間違いなく奇跡の産物だろう。
『一途なのも一緒だし、あなたとエッチなことをするのが大好きなのも一緒。互いに好き合う者同士が集まっただけの話……でもそうねぇ。魔女として生きてきたから普通の人を好きになるわけがないって思ってたけど、そんな私があなたを好きになったんだものね』
『そうそう、俺はどこまでも普通の人間なんだよ。だから亞里亞、俺を見つけてくれてマジでありがとう! 頼むから浮気とかしないでくれ死んじゃうから』
『馬鹿! するわけないでしょうが! それを言うならあなたも浮気なんてしないでよ? したら殺して私も一緒に死ぬからね』
『俺が浮気なんてするわけないだろ? というか君以上に魅力的な女性なんて居るわけないし、そもそも君と過ごす以外なら家でゴロゴロしてばっかの俺が他の女性とそういう関係になると思うか?』
あぁ……俺も何もなかったら家でジッとしていたいタイプだわ。
それからも映像の中で二人は仲良さげに会話をしていき……そして俺は目を覚ました。
▼▽
「……こりゃすげえや」
朝ではあるが、目を覚ましたのはあまりに早朝だった。
時計を見てもまだ五時半……早すぎる時間帯で、少しばかり眠気は残っている。
そんな俺の視界を埋め尽くすのは圧倒的なまでの肌色。
この世界の誰よりも美人だと自信を持って言える魔女……亞里亞さんが眠っていた。
「……こりゃすげえや」
大事なことなので二回。
俺の方へ体を向けて眠っている彼女は、俺同様に何も服を着ておらず素っ裸だ。
(朝目が覚めたらおっぱいのでけえ美女が寝ていた……俺はラブコメの世界にでも転生したのかもしれん)
なんて、そう考えれるくらいには落ち着いた。
昨日までなら慌てるはずだった……だが俺は、昨晩を通して亞里亞さんと恥ずかしいあれやこれやをやったし、お願いする形でしてもらったりと既にそういう領域は飛び越えたわけだ。
「……ちょっと触っても良いのかな?」
実は昨日、クタクタで眠る前のことだ。
『これでもう私たちは前の私たちと一緒……ふふっ、あなたが望む好きなことを好きな時にして良いのよ? 学生だしストレスとか色々と溜まることがあると思うの。その度に私が発散させてあげるわ♪』
なんてことを言ってくれたのだ。
だからちょっと調子に乗ってもよろしいか……? いいや、乗っちゃえよ俺!
「……ふぅ」
目の前にある双丘へと手を近付け、ツンツンと突いてみた。
最小限の動きにも拘らず指に合わせて柔肉が沈んでは押し返すを繰り返す気持ち良さ……ちなみにバスト108センチらしく、そんな大きいにも関わらず一切垂れてもなければ弾力も失われていない。
……突くだけでは満足出来ないのでいっそのこと揉んでみる?
そう思ったところで、クスクスと笑い声が響いた。
「全くもう……前と何も変わらないじゃないの」
「あ、亞里亞さん……」
いつの間にか目を開けていた亞里亞さんは、腕を伸ばして俺の顔を胸元に抱き込む。
「前のあなたも先に目を覚ました時、今みたいに悪戯ばかりしてたわ」
「そ、そうなんだ……」
「一番大変だったのは世那が産まれてしばらくした頃だったかしら。ベッドがミルク臭くなってしまうこともあってね」
「っ……」
「想像出来た? そうよ、私が寝てる時に軽く絞ってたのよあなた」
も、もう止めてもらって良いですかね!?
その後、延々と前の俺と亞里亞さんの赤裸々な話を聞かされて朝からゆでだこになった気分だった……だがまあ、世那さんと莉愛さんにも会ったけど何があったかは察しが付いたらしく、次は私もと言われて俺はどうすれば良いんだろう……はぁ。
「……まあでも」
亞里亞さんが笑顔なら全然……俺は良いや。
呼び方を呼び捨てにしてほしいとか、色々と提案はされたもののまだ慣れないのでそちらは追々……とにもかくにも、俺に大切な人が出来た瞬間だった。
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