無限の愛
「亞里亞……さん?」
「……刀祢」
突如、部屋に現れた亞里亞さんにキスをされた。
潤んだ瞳に見つめられ、何をしに来たのか聞くよりも早く……唇が触れてきた。
(……エッチすぎんだろ)
俺の上から覆い被さるようにしている亞里亞さん。
彼女の顔がすぐ傍にあるのはもちろんだが、ちょっと視線を下にずらせば大きな胸がぶら下がっている。
「……いきなりごめんなさいね」
「いえ……その――」
「こうしたくてたまらなかったの……自分の過去にあった出来事に向き合ったとはいえ、あの魔法を解くということは彼を許すということ……あなたの言葉で私はあの怒りを捨てたようなものだけど、その瞬間にやけにあなたを遠くに感じるようになってしまった」
「……………」
「……あなたはここに居るのに、それなのにあなたに無性に会いたくてたまらなかった」
そう言う亞里亞さんは大人には見えず、寂しさを紛らわせようとする子供にしか見えなかった……まあそう見えた錯覚に過ぎないけれど、彼女に手を伸ばさずには居られなかった。
背中に腕を回し、そのまま抱き寄せる。
亞里亞さんは抵抗することなく俺の体の上に体重を乗せ、その影響で胸元に伝わる圧倒的なまでの弾力が凄まじい。
(……胸に関する感想しか出てこないけど、それだけ暴力的なんだから仕方ないよなぁ……てかマジで凄いんだけど)
これからどうするべきか……それを考えるのは当然だけど、今の俺には今の自分だけではない感覚がある気がした。
それもまた自分であり、その答えは分かり切っている。
深く考えずとも口にしたい言葉を伝えるように、俺は亞里亞さんの目を見つめながら言葉を続けた。
「亞里亞さん、最近俺が感じたことを聞いてもらえますか?」
「えぇ、聞かせて」
「……俺、亞里亞さんを含めて世那さんや莉愛さんと知り合って……こんなにエッチな女性が居るんだなって思いました」
「うん」
俺の言葉に彼女は嫌そうな顔は一切しない……それどころか、嬉しそう且つ分かっていたと言わんばかりに頷いた。
「その中でも特に……亞里亞さんには初めて会った時から、触りたいとか色んなことをしたいって思ったんです――そして今もそれは同じ……俺の中の何かが、あなたを特別欲しいと叫んでいる」
「っ……うん」
「最低なら最低だと言ってください……今俺は、あなたという存在をとにかくもっと感じたい……亞里亞さんと……エッチなこととかいっぱいしたくてたまらないんです」
言って……しまった。
これを同級生の祖母に言っているのだから最低なことだけど、それでもこの言葉を我慢出来なかった。
もしかしたら俺も、少しだけ亞里亞さんの今の姿に触発されたんだろうなとも思う……俺にとっても、過去に決別を果たしたようなものだから。
「嬉しい……刀祢」
涙を流しながら亞里亞さんは笑い、またキスをしてきた。
ただの触れ合うだけのキスではなく舌も使ったもの……初めてのはずなのに、どんな風にすれば良いのか分かる。
温かい……そして気持ち良く心地良い。
「……ねえ、昔の姿になって良い?」
「え?」
「私とあなたが初めてエッチをした時に浸りたくてね……高校二年の時に少し戻るわ」
あ、前世の俺はそんな若い頃に……って今と同じだけどさ。
亞里亞さんが魔法を発動すると、彼女の体がグググッとブレて少しずつ変化していく。
長い髪がセミロングになり、顔立ちも若干幼くなり……そして胸が少し縮んだ。
「ふふっ、小さくなった胸を見る辺り本当にあなたはおっぱい星人ね」
「それは……えっと……」
「だとしてもHカップくらいはあったはず……だから満足してね」
それでもめっちゃ大きいのでは……!?
でも……実際にこうして見てみると、莉愛さんがもう一人現れたかのような感じだ。
「莉愛さんよりエロいですね……」
「それはそうよ。あなたにとって私が一番魅力のある女であり、エロさを感じる女なのよ? でもこの姿になると高校時代をこれでもかと思い出すわね」
「へぇ?」
「私はかなりモテていたけれど、あなた以外に興味は無かった。だからあなたとこうやって濃厚な時間を過ごしている時とか、エッチをしている時はこう思っていたの――私に恋をする馬鹿どもめ、お前たちの欲する私はもうこの人のモノなんだってね」
そう言って笑う亞里亞さんは悪女そのものだ。
まあ誰かの気持ちを利用したり、その好意を利用とかはしていないので悪所ではないのだが、それでもこの全てを見下すような微笑みは悪女のそれだった。
「それにしても良いの?」
「何が?」
「私はおばさんよ?」
「魔女である以上、それは意味がないんじゃ?」
「そうね……全く意味はないわ。長く生きるのと、見た目が一番良い所で固定される以外は人と変わらないわ」
「……………」
「どうしたの?」
「いえ……」
見た目に関して少し思ったことがあったので言ってみた。
「その高校生の姿も凄く綺麗でバチバチ好みなんですけど、それでも俺は普段の大人の姿の方が好きかなぁって……大人の姿で固定されてるってことはそれが一番の姿ってことですもんね?」
「え、えぇ……」
「きっと前世の俺はどっちも好きだったと思うんです……でも今の俺は大人の亞里亞さんを一番って思うのなら、きっと前の俺も同じだったんじゃないかって……あははっ、まあ分かんないですけどね」
俺は一体何を言ってるんだと苦笑すると、亞里亞さん変化が起きた。
髪が伸びて顔立ちが大人びるだけでなく、胸が更に膨らんだ……というかいつもの大人の姿に戻った。
「……もう好きって言葉しか出てこないわ。刀祢は私の嬉しくさせてくれる言葉ばかりくれるんだもの」
「……正直なもんで」
「ふふっ、そうね……本当に正直だわ。あぁ本当に……死だなんて下らない事象が私たちを別つことはないって改めて分かった。私たちは何があっても離れることはない……死んでも離れることはないのよ」
「亞里亞さん……?」
「刀祢、好きよ――もうあなたは死なない……私と一緒に、無限に近い時間を一緒に生きて?」
そんな言葉を最後に、亞里亞さんとの夢のような時間を俺は過ごすのだった。
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