第2話 

「これで朝のSHRを終わる」

「起立 礼 ありがとうございました」

次の授業は現代文か、鞄から教科書とノートを出してぼくは机にうつ伏せになった。

決して眠いわけではない、廊下側では転校生と自己紹介をして和気藹々としている声が聞こえる。ぼくも混じろうと思ったがあそこの中心にはきっと京谷も居る、そのせいかなぜか気が引ける。

「おい、寝てんのか?」

うつ伏せのぼくに誰かが話しかけてくる、今はあまり話したく無い気分なのに

ぼくはバレない様に目を瞑り寝て過ごそうとした。その時、バンッ!

大きな音と同時に背中に衝撃が走った。ぼくは驚いて声のする方を見た

そこには人を叩いておいてそれを見てほくそ笑む京谷がいた

なんだろう無意識的に眉間にしわを寄せている

「やっと起きたか、なんだ?寝不足かw」

さっきまでしおらしくしていたのにすっかり元気になっていてすこし胸をなでおろした。時を同じくして胸の痛みも少し引いていくような感じがした

「どうした、どこか痛いのか?」

京谷は人のことをたたいておいて少しにやついた顔で聞いてきた

なんだろう少しでもやりすぎてしまったのではないかと、考えていたぼくがばかだったと思い知らされる。ちょっとムカついた、でも少しうれしかった

「いいや、君がたたいたこと以外は全然!」

少し食い気味に言ってやった

「そうかよ、そういや現文の宿題ってやったか?」

彼はたたいたことを悪びれることもなく聞いてきた、それにぼくは懲らしめようと思った

「やったけど、人の背中たたくような奴には見せない!」

そういって僕はそっぽを向いた。

どうだ、ちょっとは悪いと思ったか?そう思っていると

「頼む! 今度またゆうこと聞くから!」

彼はそういって手を合わせて懇願してきた、まぁぼくも人の心はあるから許そうかなと思い

「わかった また今度ぼくの言うことを一つ聞く これが条件だぞ」

僕はそう言い現代文のノートをかした、彼はまるで表彰かの様に受け取りまるで子供のようにはしゃいでこう言った

「よっしゃー! マジで助かったよ やっぱ持つものはおとこの友情だな!」

「フッ」

ついつい笑いが込み上げてきて笑ってしまった

「なんだよ、そんなにおかしいか?w」

彼は少し恥じらいながらも笑っていた

「そりゃあだって君が子供のように喜ぶからww」

そう言うと急に恥ずかしくなったのか急におとなしくなった

「そ、そうかよ」

本当に子供みたいだなと思っていると、後ろから

「あのぉ、」

初めて聞く声、まるで小鳥のさえずりの様に、高く澄んだ美しい声が聞こえた

ぼくが振り向くとぼくよりも少し高くてすらりとした体つきに整った顔立ちの女性がいたぼくは気を引かれて黙ってしまった、

「初めまして・・」

キーン・コーン・カーン・コーン

チャイムが鳴りぼくは、はっと固まっていたのが解けた

「やべっ 先生来るから座ろうぜ大羽さん」

「は、はい」

二人はそう言って席に戻っていったぼくも授業だ・・・切り替えないと

「これで授業を終わるぞ はぁ、おーい かなめ!」

「は、はい!」

「しっかりしろ ずっとボーとしていたぞ」

「すみません 以後気を付けます。」

ぼくは何をしていたんだろう授業中ぼーっとするなんて、そう考えているとまた後ろから声をかけられた。

「今度こそ挨拶できますね、」

そう言って笑顔で転校生は話してきた

「初めましてワタシ 大羽 百合佳といいますこれからあと一年間ですがよろしくね」

ぼくは少し深呼吸をして心をただしてから返した

「初めましてボクは 加賀地 カナメって言います。こちらこそよろしくね」

「ボ・・ク?」

「っ」

その時、教室の入り口から女子生徒が大声で僕たちに伝えてきた

「もう教室閉めるよー 早くいこー」

ぼくはとっさに伝えた、まるで何かから避けるように

「う、うん今行くー 大羽さんもいこ」

「あ、はい、、、」

彼女は何やら腑に落ちないようだった、今日はそのあと一度も話すことはなかった

カーン・コーン

「これでSHRを終わります」

「起立 礼 ありがとうございました」

朝のことがまだ残っているもしかして、と何度も思い出してしまう幾度も忘れようと思ったけど忘れることができなかった。何か心を縛られたように不安になっていた

「おい!」

何か大きな声で僕を読んでいた誰だろうぼくは今悩んでいるのに!

怒ってやろう、文句を言ってやろうそう思ってそいつのほうを見てぼくは、ぼく、は

「何固まってんだよ、早く帰るぞ!」

「兄貴が大声で叫ぶから要も驚いてかたまるだろ?!」

そこには同じような顔立ちの二人がいたいつものようにいがみ合っていて、でも少し仲良く映る二人なんだか今日あったことがあほらしいと思わせてくれるほど元気な二人。

「よし!帰るか!」

ぼくはサッと立ち上がって二人の間を割って通った。彼らは唖然としていたがすぐにニッと笑ってまるで待っていたと言わんばかりの勢いで

「おう!」

と言ってぼくの横を挟んで歩いた

「そういえば、京谷部活は?」

「あぁ、珍しく顧問がオフにしてくれててよ」

「そうなんだ、京治は?」

「俺は模試の勉強で休んだ」

「そっか」

なんだか小さい頃を思い出す。三人並んで帰れるなんていつ以来だろうなんだか楽しいな、と思いに浸っているともう二人の家に着いて、京谷が

「じゃあな、また明日な」

元気の塊のような挨拶だった僕も負けていられず大きな声を張って

「おう!また明日!」

そう告げて一人帰路に就く静かな夕暮れ道、なんだか今日は疲れたな。

ぼくの家と二人の家は少し離れている、とはいうものの徒歩3分の距離けれども

このひとりの時間はいつも嫌い。

玄関を開け

「ただいま」

と告げる誰かがお出迎えしてくれるわけでもない、ぼくは帰るとすぐにリビングに行ってかばんを置いて、学ランを脱ぎハンガーにかける。毎日帰ってくる時間の時おかあさんはキッチンで夜ご飯の準備をしていて、ぼくはいつも必ず手伝いをする。

ぼくは洗面台に行き手を洗い、リビングに戻るとおかあさんが笑顔で聞いてくる

「叶愛(かなめ)今日は学校どうだった?」

ぼくはいつもこう答える

「楽しかったよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る