ぼくは君のそばに

@eruno4

第1話

白く細い光が差し込みぼくの目を照らした、この暗い世界をその薄い光がぼくを現実に導いてくれた。小鳥がさえずり小学生のあいさつが聞こえて寝起きの重い目をこじ開けた、荒々しい手取りで携帯を開きベッドから飛び起きた。息を切らす勢いで支度をする。

「今日雨降るかもだから傘持っていきなさいよ」

ぼくは玄関の扉を勢い良く開けると同時に家族に、

「行ってきます!」

「ちょ、あんた傘は!?」

お母さんの呼ぶ声に耳を傾けず、ぼくは元気よく飛び出した。今日は天気がいい雨上がりの香り、雫をまとった道草が輝いていた朝は幼馴染の家に行くのがいつもの流れだ。ぼくは小学校からの腐れ縁の双子がいる、朝は三人で登校している毎日いがみ合う双子の真ん中で僕はなだめつつも楽しく笑う、二人は口をそろえていつも聞いてくる「そんなに何がおかしいんだ」と、これがぼくたちのルーティーン。

「今日の体育は体力測定だってよ」

「えぇ、俺今日は見学したいなぁ」

「何言ってんだよ、今回も勝負しようぜ」

「いやだよ、兄貴はだって運動得意じゃん」

今日は体力測定かぼくも憂鬱だなぁ。双子の兄 京谷は運動神経がよく水泳部のエース的なポジションで明るく能天気な性格だ、一方弟の京治はあまり運動が得意ではないけど、優しくておしとやかな性格だ。正反対のような性格で双子なのか少し疑わしい。

「かなめ~、おーい」

「なんだぁ、お前も見学する手段考えてんのか」

まるで人をあおるような形で京谷が聞いてきた

「いいや、僕は全然余裕だよ」

ぼくは胸を張って言い返してやったけども奴は、

「ほーう、でかく出たな身長もまだ小さいのに」

と気にしていることをやすやすと少しムカついて。

「うるさい!ばか!」

と怒鳴ってその場を駆け出した。

結局一人でついてしまった窓際の席で少し曇った空を眺める、青い葉を棚引かせる桜を見てため息が出てしまう。

「あと一年かぁ、」

「どうしたの? また京谷に嫌なこと言われた?」

黒くつややかな長い髪を揺らし、頬杖をついて聞いてきた。彼女は、春風美月ぼくの中学校からの友達で一緒に図書委員をやっている。

「うん、まぁいつものことだけど身長のことを言われてちょっとね」 

「ひどいよね幼馴染なんだからって言っちゃダメなことぐらい」

彼女が言葉を言い切る前に誰かが後ろに来た。

「ひどくて悪かったな」

そこには少ししおれた京谷がいた。

「わかってるならちゃんと謝りなよね」

彼女はそう言ってぼくたちの前から去っていった。沈黙が二人を包んだ教室の真ん中でみんながあいさつ押している声がとても遠く感じた、ぼくは耐え切れず。

「あのt」

「すまなかった!」

ぼくが言い出した声をかき消してその声は僕を貫いた。前には頭を下げている京谷がいた。

「お前が身長のことを気にしているにわかっていたのに」

気が晴れたというよりもばくは、この謝罪に対して罪悪感でいっぱいだった、またすぐに元に戻ると思っていたから謝られてなぜか心の奥がつらかった。

その心をごまかすので精いっぱいで

「大丈夫だよ いつもどうりじゃん」

ぼくは自分の気持ちから逃げてしまった。あんなにも他愛もないことで彼を傷つけてしまったのではないかと、大げさすぎたのではないかと思っていた。謝るべきはぼくだってその気持ちをぼくは押し殺した。

「もうSHR始まるから座ろ」

「あぁ、わかった」

彼の顔は笑顔だった、でも心なしか少し曇っていた。

「起立 礼 着席」

「今日は転校生がいる 入ってきていいよ」

ぼくは窓枠を滴る水滴を見つめていた、もう最後の夏が近づいているのだと少し時間が過ぎるのが怖くなっていた。一人黄昏ているとSHRなのに扉がひかれる音がした、扉のほうを見るとセミロングのポニーテールでまさに大和撫子のような女性が入ってきた。

「今日からお世話になります 大羽 百合佳 といいますよろしくお願いします」

クラスの男子は黄色い声援を送った、女子は少し喜びながらもうちでは歓迎していなさそうだった。ぼくは京谷の背中を見てしまったさっきのことを気にしてか、あまり見ないようにと思っていたが。

彼もほかの男子と同じく歓迎していたぼくは少しほっとした、いつもの彼に戻ったから。彼はどんな人でも受け入れるから、大丈夫。

「じゃあ、大羽の席は・・ 京谷の隣でいいか」

(っ)

「しっかりと学校のこと教えてやれ」

「はいはい りょうかーい」

「よろしくお願いいたします、大羽です」

「おう、俺は雨宮 京谷だ、よろしくな」

なんだろう、少し雲が濃くなってきたななんだか雨降りそうだなぁ。

「かさわすれてきたなぁ」

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