第40話「巨大迷宮『栄華の夢魔』 6」
カンナ:アホの子だの真っ直ぐなやつだの、褒めてんのか貶しているのかどっちかにしてほしい今日この頃。わたしは元気です!
アオ:一応褒めてるし、イジってもいる。カンナの反応が良すぎる。
ネネ:真相に近づく感覚にゾクゾクが止まらない。空白の歴史を暴きたい探偵ネネ。
ヴァン:真の空気とは、読者にも存在を忘れられることを言う! 悲しくなんて無い。
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前回のあらすじ。人の欲望に際限はないらしい。
『――人の欲望は際限ない。それがたとえ、どれほどの地位と幸運に恵まれている人間だとしてでもだ』
前回の歴史のお勉強からすでに4日がたった。わたし達は今日も元気にダンジョン攻略に勤しんでいます。
「うーん、なんかなぁ……」
「どうしたの、カンナ。まるで深海から打ち上げられた魚のような顔をして」
「それどういう意味?」
今私たちは90階層のボス戦を終わらせ、100階層に向かっている途中で休憩を挟んでいた。いや本当に、メチャクチャ大変だったんだから。50階層から先の敵が今まで戦ってきた敵なんか全く目じゃないレベルで強かった。
「一番大変だったのはやっぱり……サキュバスクイーン戦でしたねぇ。男女問わず誘惑してくるもんだから冷や汗出たよ。でもなぜか誘惑に一番掛かりそうなアオとヴァンくんはめちゃくちゃ普通だったけど」
「あんな雑魚い誘惑で揺れるかよ。しかしアイツも質が落ちたな、全く興奮しなかった」
「……」
ヴァンくん黙っているけど本当に誘惑されてなかったの? あの戦いの後も今もずっと黙り込んだままなんだけど。実は本当は誘惑されてたり、あ、睨まれた。ここにいるメンバーでもしかしてテレパシー使えないのわたしだけ?
「というか話をそらさないで、カンナ。なにを悩んでいるの」
「……言わないとダメェ?」
「駄目」
即答されてしまった。……別にいいか、黙っているほどの重大なことでもないし。
「いやさ、わたし普通の学生だったのになんかとんでもないことに巻き込まれてるくね? って思っていて」
「普通の学生とは?」
「光魔法ある時点で普通も何も違うだろ」
はいそこー、うるさいですよ〜。
「わたしはただ平和に過ごしたいだけだし、彼氏欲しいだけだったのになんか遠い所まで来た感覚がしてさ」
平凡で、学校では落ちこぼれだったわたしがまさかこんなダンジョンの最奥近くまで来ているなんて。それに、4日前に聞いた空白の200年の歴史の一部。この国の初代女王の話。正直頭が追いつかない。
「ずいぶんと平和から遠い所まで来たなぁ。歴史については口外すれば命狙われんじゃね?」
「まじでどうしてくれるんだよこのアホ悪魔!!」
返せわたしの平穏を! カムバック平和! わたしの座右の銘は「ラブ&ピース」なんだ! みんな愛で包まれて幸せになろうよ!!
「言っていてもしかたないわ。それに、アオはまだ歴史の……国一つが滅ぶことになったそのきっかけを話してないんだから」
「いや、話さなくていいよ? もう嫌な予感しかしないから」
ほんとに、不利じゃなくて話さなくていいから。まだここらへんで話し止めておけば間に合うからね。ちょっと光魔法が使える程度のわたしが関わっていい話じゃないことなんてもうわかっているんだから。
「フッ、流石に鋭いなネネ」
「私に隠し事なんてアマちゃんなあなたにはできっこないわ。あまり舐めないでほしいわね」
「いや人の話を聞けぇえええい!!」
何シリアス展開無理やりぶっこんで話進めようとしてんだ! その顔やめろ! そのシリアス美形面やめろ! させないからね絶対!!
****
「さてさて、というわけで君たちはようやくこのダンジョンをクリアしようとしている直前まで来た。よくやったぞ」
「前半と空気が違いすぎでしょ。始まりの村にいる村長なの?」
「だがここから先にいる敵は非常に強力だ。簡単には勝てないだろう」
「王様? 王様なの?」
突然始まったアオによる誰のためにもならない茶番劇。どうしてこの鬼悪魔は人の話を聞かないの? そのお耳は飾りなの?
「というわけで最後の敵、100階層に居る敵について話しまーす。しっかりメモを取るように」
「先生か! じゃなくて、100階層のボス?」
そっか、ようやくこのダンジョン攻略も終わるもんね。いや本当に長かった。特に50階層を終えた後からが。
「さてそこで空気になっているヴァンくん。君に問題だ。50階層先の敵について並べよ」
「誰のせいで空気になっていると……。60階層のボス、死霊術師デビルズネクロマンサー。70階層のボス、ケルベロスガーディアン。80階層のボス、メタリックガーゴイル。90階層のボス、サキュバスクイーン」
「はーい正解百点満点」
パチパチと拍手をしたアオ。確かにそれが今まで戦ってきたボスだけど。それが一体何?
「このボスたちになにか秘密があるというの?」
「このダンジョンの名前、今は巨大迷宮『栄華の夢魔』なんて言われてるらしいな。言いえて妙とはこのことだ。このボスたちは基本、デーモン系に属する魔物だ。誰が決めたのかは知らねぇがな」
「? えっと、つまり?」
「つまりこの先に居るボスも、同じような系統ってことだ」
今まで見てきた扉の中で、一際大きな扉がわたし達の前に立ちふさがる。扉の先にまで感じる悪意と強大な魔力。感じてわかる。これは、本気でやばい敵だ。
「この先に居るボスの名前はマインドミラー。敵対した相手の記憶を読み取りコピーし、その者にとって最悪の敵となる悪魔系統の魔物だ」
扉が勝手に開かれ、闇がわたし達を見つめる。その時、青色の炎が壁に飾れる松明に灯っていき嫌な空気を増大させていく。青色の光が空間を照らし出し、そこに立つ敵を浮かび上がらせた。
え、いや待って……まさか。
「な、なんで……なんであそこにアオが居るの!?」
立っていたのはよく見る、けれども関節部分がまるでビクドールのように変わっているアオが居た。ま、まさかマインドミラーがコピーしたのって……っ。
「さ、頑張って勝てよ。私にな」
最悪の敵、まさにそのとおりだ。だってそこに居たのは紛れもなくアオのコピーだったのだから。
この鬼悪魔本当に最悪!!
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