第35話「巨大迷宮『栄華の夢魔』 1」
カンナ:アホ鬼悪魔による地獄のダンジョン攻略に参加。お前絶対に許さない。
アオ:いろんなことを秘密にしている。言う必要ないと思っていたのにな。
ネネ:自分の成長を知れる良い機会。これが終わったら言いなさいよね。
ヴァン:また巻き込まれた人。不憫枠一号。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前回のあらすじ。アオによるダンジョン攻略がスタート。
「さて、まずこのダンジョンだが全部で100階層ある巨大迷宮だ。1階層ごとに階層ボスというちょっと強いボスが存在するけど今のお前らなら大丈夫だろ。とりあえず2日で50階層まで進むぞ」
「計算が馬鹿になった? 無理に決まってるでしょうが!!」
2日でどうやって50階層行けと!? 10階層すらも攻略できてないのにわたし達が50階層突破なんて……。そもそも普通の魔物だって見たことないんですけど!?
「行けるって言ってんだろ。安心しろ、このアオ様がガイドしながら連れて行ってやるんだから」
そう言いながらアオはそそくさとダンジョンの扉を開けて中に入っていく。本当に一切の躊躇も遠慮もないな!
「だいたい裏道だってどこにあるか知らないし。そもそもなんでアオが知っているの?」
「ここが私の遊び場だったから」
「物騒なところで遊んでいるな?! もっといいところあったでしょうか!」
ここまで来て衝撃の新事実だよ。まさかこの栄華の夢魔を遊び場にしているイカレがいるなんて。アオの強さの理由はここにあったのかも知れない。ほんとどこで遊んでんだっ。
「というわけで、裏ルートの入口はここな」
「? 何を言っているのかしら。ただの壁じゃない」
ネネの言う通り、アオが親指で指した場所はただの壁。どこにでもあるような石畳と同じような材質でできた石壁は、何かの仕掛けがあるようにも見えなかった。
「おう、ただの壁だがここに一定の魔力を注ぐとだな……」
壁の中にアオの魔力が入り込んでいく。満遍に入っていった魔力が壁一面を覆ったかと思えば、壁が大きな音を立てながら消えていった。
「ええ!? かく、隠し扉!?」
「たまたま見つけた裏ルートだ。この扉の先の階段を下っていけば10階層のボスにつく」
確かに螺旋階段が下へ下へと伸びている。どこまでも深く、光源が松明しかないそこは降りるのにも勇気がいりそうだ。
「というわけで行くぞ。一週間は短いんだからな」
「え、ちょまっ。本当に行くの? 行くの???」
「確か大人になればなるほど時間は短く感じるのでしたっけ? 特に老人」
「違うな、老人はむしろ何もやることないから長く感じるんだ。短く感じるのは二十代から三十代だ。だから私は老人じゃない」
「人の話聞いてくれない? 躊躇無しでめちゃくちゃ進むじゃん。ナニコレ常識人わたしだけ?」
「200歳オーバーの悪魔が何を言っているのかしら」
「お? 何だネネやる気か? いいだろう相手してやるよ」
「いや、ここで喧嘩するの止めてくれる! 切実にさ!!」
というか道すがらで何喧嘩してんだ!? ボス戦前に喧嘩して体力減るような真似するの止めてもらえます? お小遣いあげるからさ!
「何いってんだアホ娘。私がこいつとの戦いで体力がなくなるわけ無いだろ。瞬殺だわ」
「それはこちらのセリフよ。ひき肉にしてやる」
「貴様お嬢様に手を出したら殺すぞ。塵すらも残さん」
「もうヤダ、この人たち」
不安しかないこのメンバーでこのダンジョンをクリアしないといけない。その現状にわたしはひどく胃が痛くなるのだった。
****
ダンジョンと言えば、ひっきりなしにくる魔物との戦闘。そして巧妙に隠された罠に難解な仕掛けを解き、ようやく階層ボスを倒す。そこまでの過程にある物語がきっと楽しいのだろう。
「だと言うのにすっごい快適。ほんと馬鹿みたいに快適すぎて眠くなるし、そうこうしている間に階層ボスの部屋まで来てしまった」
この裏ルート、本当に階段を降りるだけなんだけど。他の頑張ってダンジョンをクリアしたりしている数多の主人公の方々に謝ってほしいレベルで快適なんですけど。きっとここまで来るまでの過程が大変であるはずなのに、一切の苦労もなしに階層ボスの部屋まで来てしまったんだけど。
「ここまで来るのに約1時間。その間に魔物が襲ってくることもなかったわね」
「な、早かっただろ」
「本当に謝ってほしい。色んな人たちに」
けど、流石にこの部屋に入ったのならわたし達は苛烈な戦闘をしないといけなくなるだろう。じゃないとただただ階段を降りるだけの集団になっちゃうから!!
「さて、この先にいる階層ボスについて教えてやろう。ここにいるのはズバリ! スライムだ」
「「「す、スライム!?」」」
スライムって、あの魔物の中でも最弱と言われる序盤の敵? それが階層ボス!?
「そんなの、他の人達だって倒し放題だし、10階層なんて楽々突破じゃない!」
「そうだな、雑魚だ。だからお前らでも簡単に倒せるぞ」
なんだ、そういうことか。階層ボスでもちゃんとわたし達のレベルに合わせた敵ってことだったんだね。良かった。アオのことだから絶対に馬鹿みたいに強い敵と戦わせて来るのかと思った。だって、鬼悪魔だし。
「なーんだ、じゃあ楽勝だねネネ! ヴァン君! なら早速行こう!」
ワリと楽勝かも、アオにもやっぱりいいところがあるじゃん。そう思いながらわたしは階層ボスの部屋を開ける。かなり重い扉をなんとか開けて中には入れば、広い部屋の中心に階層ボスであるスライムが居た。
「よーし、じゃあ早速倒し……て……え?」
確かにスライムだった。部屋の三分の一を占める粘液の塊。感じる魔力量はわたしよりも多い。しかも粘液が触れた場所は嫌な音を立てながら溶けている。巨大な脅威、ビックスライムの姿がそこにあった。
「え、ナニコレ」
「ここ10階層のボス。ビックキングスライム。魔法による攻撃が効きづらい上に物理による攻撃は大方弾く。中央にある核を壊さない限り永遠に増殖する、スライムの王だ。あ、核の周りの粘液は強力な酸で出来てるから触れたら溶けるぞ。気をつけろよ」
「気をつけろよ、じゃないわ!! スライムはスライムでも化け物級じゃない!!」
わたしを騙しやがったなこの鬼悪魔!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます