第33話「その令嬢、上手」
カンナ:魔力の流れだの何だの言われて破裂寸前。勉強って何? 美味しいの?
アオ:カンナのやる気の無さに若干引き気味。どうしたらこんなに怠惰になれるんだ。
ネネ:アオとカンナのコントが面白すぎて集中しづらい。ナチュラスサイコスドS女王。
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前回のあらすじ。カンナ、自ら墓穴掘る。
今日でアオによる魔法修行10日目。最初の頃の修行方法で伸びるかどうか疑心暗鬼だったけれども、私の魔法技術はメキメキと伸びていった。
「さすがは狂乱の悪魔。魔法の腕があれほど卓越していたのも分かるわね」
明らかに増えた魔力量は、今までの修行法よりも明らかに自分に結果を残してくれる。ゴールデン家の修行法もそれはそれで増えたけれども、こっちは比べ物にならない。
「魔法の腕は勿論、剣の腕、回転の早い頭脳。悪魔が全部こんなふうだとしたら、正直脅威以外の何物でもない、けど」
ここ10日間、アオの近くでいてで分かったことがある。アオの一つ一つの所作には人間臭さがあったこと。それが顕著となっているのが、アオが持つ東方の刀という武器の扱いだった。
「間違いなく、どこかの流派によるものね。でも、悪魔が人間に教えなんて受けるのかしら?」
多くの謎を持つ、鬼と悪魔の混合種アオ。そもそもなぜ悪魔と鬼の特性を持つのか。それすらも謎にまみれたアオに、私が何もしないわけがなかった。
「報告書にも、アオについての手がかりは存在しない……となれば」
一度だけ、アオについてカンナに聞いたことがある。正直その話の殆どはどうでもいいことばかりだったけれども、一つだけ気になったことがあった。
――そう言えばアオね、一度だけ昔の話をしてくれたんだよ。詳細は色々省くけど、確か……二百年前の性じ……じゃなくて営みについてね。思えばアオから具体的な数字が出たのってそれぐらいだったかも。え? 何を聞いたか気になるって。いやいやそれはあれだよ、トップシークレットってやつだから。言えないから。ねぇなんでそんな意地悪そうな顔してるの。いやぁ! 追いかけてこないで! あ! アオー! ちょっとたすけ――
「二百年前の話、ね」
二百年前といえば、ゴールデン家でも全て知りきれない空白の時代だったはず。日約年前の記述は、まるでそこだけなかったことのようにすっぽりと抜けきっている。この国が建国された時代も二百年前だと言うのに、それらの記述は一つたりともないのだ。
「二百年前、アオの秘密、隠された歴史。偶然とも言えないわよね」
少し、洗ってみる必要がありそうだわ。
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「こんのバカ娘! さっさとこっちにこい!」
「イヤよ! もうわたしできないわ! こんな、こんなこと!」
「いい加減にしろよ、こっちが甘い顔していれば調子に乗りやがって。お前、このまま降りてこなかったらこいつがどうなってもいいのか?」
「そ、それは! それだけは止めて!」
「じゃあどうすればいいのか、もう分かっているな?」
「クッ、わかりました……でも、これだけは言わせてください。――わたしの体は好きにできても、心までは自由にならないと!」
とー! とー……! とー…………!
「……あなた達は一体何をしているのかしら?」
「なにって、このバカアホ娘がサボっているから叱っているんだが?」
「アオからわたしの大事な大事な本を水浸しにするのを防いでいるだけだけど?」
「はぁ……」
どうやらネネには私達のやり取りは高度が過ぎたらしい。ため息があまりにも深い。何だよわからんやつだな。この三文芝居が楽しいっていうのに。
「そんでぇ? 公爵家の本邸に行ってきたんだろ? どうだった」
「どうもこうも、特に変わったことは何も。両親は相変わらずですわ」
そう、ネネはここ3日間ここ修行場に顔を出さなかった。という理由もそのまんま。公爵家に呼び出しを食らったらしい。その理由は、この間のカンナ誘拐事件、首謀者判明編でネネが色々失敗し、その理由を聞くためだそうだ。つまりお叱りって意味だな。
「叱られただろう? 叱られただろう? これを機に悪巧みは控えるこったなお嬢様」
「まさか、私がただ素直に叱られるとでも? それに両親は私のすることにあまり興味はないし、挽回できればそれでいいですから」
なんとも冷めた親子関係だ。ああ分かった。こんなに放置でもしたからこいつここまで捻くれたんだ。間違いないね。と思っていたら、私の頬すれすれに炎の玉が飛んでくる。後ろにあった樹木が灰も残らず消えてしまった。
「ナニカ言ったかしら?」
「いいえ何も」
やばい、死ぬ。この女殺す気だったぞ今。
「あれ? でもあまり叱られなかったんなら帰ってくるの遅くない? 公爵領って中央だから半日でつくじゃん」
あともう一歩で殺されるその時、救いの手ならぬ声が私の頭上で響く。流石だカンナ。ナイス質問。
「それは、色々と調べていたことがあってね。でも一回いいところまで調べたから、私だけでも帰ってきたのよ。ヴァンもまだ調べている最中だしね」
「調べごと? って何?」
わざわざ公爵家の娘が調べること。しかも時間をこんなにかけて。なんだか背筋から嫌な予感というのがひしひし感じられる。カンナの質問にネネは頷き、私の方へ視線を向けた。
「アオ、あなたのことよ。二百年前の、あなたがいたこの国に居た可能性の高い時代を調べていたの」
どうやら嫌な予感というのが当たっちまったらしい。さて、どうしたものか。
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