3章 ダンジョン修行編
第28話「その女、特待生失格」
カンナ:今作のヒロイン。ドレッシングはシーザー派。
アオ:今作の保護者。ドレッシングは和風派。
ネネ:今作の最初の強敵。現お友達。ドレッシングは嫌い。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
わたしの名前はカンナ・リーブル。いつかはナイスバディなお姉さんを目指すピチピチの16歳。突然だが、わたしの人生はなんだかんだうまく行っている方だと思っている。うまくいかなかったことはないけど、それでも肝が冷えたことなんて1、2、3、もっとあるかも知れないけどそれぐらいだ。
「なん……だと」
そんなわたしは今、窮地に立たされている。それこそ、冷や汗が止まらず足が震えてしまうぐらいには。
「赤……点」
眼の前の通知表に書かれた赤点のマーク。その項目は、実技魔法……。
「嘘、嘘よ……、嘘よぉおおおおおおおおお!!」
「現実です」
「うわぁあああああん!!!」
先生の冷たいというより呆れた視線は受けながらわたしは膝をついた。わたしの、夏休み……消えたっ。
****
「うぇええええええん!! アオーーー!!」
「うわっ、うるせぇなんだ。今忙しいんだけど」
「わたしの本を読んでダラケているそれのどこが忙しいんだ!!」
わたしの部屋で寝そべりながら本を読む眼の前のイケメン。名前をアオ・クロードという。本人曰く二百年以上封印されていた鬼悪魔。その名の通り鬼と悪魔みたいな性格をしている。
「誰が鬼と悪魔みたいな性格だ」
「そんなことより!!」
「そんなことってなんだこら」
「これを見てアオ!! やばいんだよ!!」
「んん?」
わたしは先程の通知表をアオに押し付ける。面倒くさそうにしながら覗き込んだアオは、眉をひそめてそしてジト目でわたしを見上げてきた。
「お前……どうやったら実技で赤点取れるんだよ。光魔法の使い手だろうが」
「うう……耳が痛い。泣きそう」
「もう泣いとるわ。はぁ、いやいやこれはなぁ」
「夏休みがぁ……っ」
せっかくいろんなことしようとしていたのに。本を読んだりしたかったのにぃ、どうしてわたしはっ。
「で、赤点ということは再試があるはずだろう?」
「……うん、二学期の始まったすぐにある」
「なんだ、思ったより猶予期間があるんだな」
「魔法の実技は、普通の授業みたいにいけないんだって」
「なるほど、まぁ魔法は訓練を重ねて初めてまともに使えるからな。ゆえの猶予期間。夏休み消費してでも全力で魔法を磨けってことか」
さすがアオ。1の情報からすべてを読み取った。普段の脳筋的な戦いとは違うね。
「カンナいまめちゃくちゃ失礼なこと考えなかったか?」
「ソンナワケナイヨ。それより、どうすればいいかなアオ」
「ふむ……」
考え込むアオは、じっとわたしを見つめた後ため息を付いた。すいません、どうかわたしを見捨てないでください。
「しょうがねぇな。なら、こうしようかカンナ」
「こうって、なにを?」
「決まってんだろ。ここから修行に移るぞ、特待生」
楽しい楽しい、魔法修行のお時間だ。そう嗤ったアオは酷く楽しげだ。あれ? これもしかしなくとも選択誤ったよね? こんなことなら真面目に魔法の修練するんだった……。
****
シーレント学園は今日の終業式をもって夏休みに入った。他の子ならまず家に戻ったり遊びに行ったりすることでしょう。え? わたし? わたしはねぇ……。
「オラァ! まずは基礎だ! 基礎をおろそかにするからあんなへっぽこ魔法しか使えないんだよこのアホ娘! 死ぬ気でやれ!!」
「ひぃいいいいいいいい!!!」
眼の前の鬼悪魔教官がわたしを水鞭でしばいてくる。魔法をせっかく練っていたのにそれもお釈迦になった。うへぇん! 厳しいよぉ!
「あらまぁ、大変ですわねぇ」
「おう、ネネ。来たか」
わたしが必死に魔力を練っていれば、そこにネネとヴァンくんがやってきた。とても優雅に日傘まで差して。
「アオも少しは手加減しては? 多少は良くなっているわよ」
「ダメだな。まだ魔力の纏まりが浅い。この状態で魔法を構築しても威力は低くなる。ここで甘やかすのはカンナのためにもならないしな」
「過保護ね……」
敬語のないネネはこのメンバーのみでよく見られるようになった。最初はびっくりしたなぁ。でも敬語ってなんかよそよそしかったから少しは嬉しいかも。ニヤつくわたしは、手元で魔力を練っていくがその形をよく見ていなかった。きれいな丸じゃなく、グニャグニャとした魔力にアオの怒号が飛ぶ。
「ちゃんと集中しろ! 魔力が乱れているぞ!!」
「ごめんなさいっ!」
厳しい! 厳しいよこの人! いや人じゃないけども。やっぱりアオに言うのは間違って、いやいやこうなったのは自分の責任だし、実際アオに見てもらったおかげで少しだけ、魔力の流れを理解できた気がする。
「ですが、もうしばらくはその状態なのでしょう? 少し休憩したらいいんじゃないのかしら」
「……それもそうだな。おいカンナ、休憩だ」
「はぁ〜〜」
魔力を錬るだけで集中力がいる。ネネが来て本当に助かった。じゃないとあと少しでなんか内側からパンッてなるところだった。
「ありがとうネネ〜。本当に助かったよぉ」
「いいのよカンナ。だって私もこれからアオに稽古をつけてもらうんだから」
「へ?」
「そういやそんな話もしたな。勉強熱心なことで首席様」
あれ? おかしいぞ、流れが変だ。今たしかに稽古をつけてもらうって……。止めに来たんじゃないの?
「じゃ、この休憩が終わったら再開だ。いいな、カンナ」
「う、う、う、嘘ぉおおおお!?」
本当に、ここ最近の人生うまくいかないな!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます