第27話「その女、公爵令嬢失格 最終」
カンナ:ヒロインだがトラブルメーカー。今話が難しすぎて頭ショート中。
アオ:保護者だが愉快犯。何だが面倒そうな話に頭を空っぽにしている。
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前回のあらすじ。ネネはアホ王太子との婚約が嫌でアオを手に入れようとしたらしい。やることのスケールが段違い。
『えっとだな、つまり何だ? お前はそのバカ王太子との婚約が嫌でこんな事を起こしたと?』
「そうですけど」
『ハイ解散』
呆れたアオの声と、いつになくふてぶてしくなったネネさんの声にわたしは意識を取り戻す。はっ! わたしは一体今まで何を……? たしか、アオがネネさんを助けて縛って理由を聞いて……そこから何も思い出せない。
「解散とは酷いですよアオ。もう少し理由を聞いてくれてもいいじゃないですか」
『そんな理由でこんなこと起こしている時点で呆れしかねぇんだよ。後ろの奴ら見ろ、約1名除いで驚きで顎が外れそうだぞ。な、誘拐犯』
「えっ!? なんで俺に振る!?」
「あらそうなのですか? 貴方もくだらないと思っていて?」
「え、そん、そんなワケ無いですよお嬢様! くだ、くだらなくないですよ!!」
『どもったな。やっぱり思っていたみたいだぞ』
「ヤメロこのクソ悪魔!!」
うん、なんかこの時点で起きたら絶対に巻き込まれるから寝てよ。誘拐犯、ここでこの二人を止めれるのは君だけだ。起き抜けに聞こえる会話にわたしは狸寝入りを決め込んだ。このドS二人と生身で戦うなんて無理である。泣くのがオチ。そんな目に見えているオチを作るぐらいなら寝たほうがマシってやつよ。はい、お休み。
『何寝ようとしてるんだカンナ。起きたのならさっさとこっちにこい』
「ふ~ん」
どうやら逃げられないらしい。このエスパー鬼悪魔めっ。
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それで話を聞いている内に、ネネさんの目的が王太子との婚約破棄。そして公爵家の実権を握ることだということが分かった。なるほど、まったくわからん。
「それでここまでします? バレたらとんでもないことになっていたんだけど」
「犠牲無くして手に入らないというのなら犠牲を作ってでも進む。それが私です」
「いや、その迷惑被るのわたしなんだけど」
「ま、どちらにせよお前は負けたんだからそれは出来ねぇな。ざまぁない」
人間に変化したアオがあざ笑いながら指を指している。ヤメロ、アオ一体何歳だ大人気ない。
「そうですね。これほど無様をさらしたのです。これ以上戦って犠牲を出しても、私の得れる利益も少ない。ここいらで引きますよ」
「そうか。ま、これ以上戦うなら死ぬからな。懸命な判断だ」
「……」
すでに話がまとまりつつあるそれに、わたしはどこか疑問に思う。あれ、なんか引っかかるな……。そう、小魚の骨が喉に引っかかるアレみたいな。ああいうのはパンとかコメとかを丸呑みにするとか言うけど丸呑みするの抵抗感ない? ない? そっかわたしだけか。
「あれ? なんだっけ。さっきまでなにか考えていたような……」
「どうしたアホの子。まるで3歩歩いたら忘れる鶏みたいな顔をして」
「誰がアホで鶏だぁ!!」
「元気になったなよしよし。つーワケで帰るな。もう二度と悪さすんじゃねぇぞアルティメット猫かぶり令嬢〜」
「ふふ、一言多いですよ傲慢暴力悪魔」
バチバチと火花が散り、二人は厭な笑みを交わしている。うーん、仲いいことは美しきかなってね。アオがわたしの腕を引きながらわたしはウンウンと頷く。やっぱり仲いいほうがいいよね。ドSコンビだし。
こうして、特に大きな損害があったようななかったような気もしなくもないけど、今回の事件は無事、幕を下ろしたのだった。
****
数日後の、シーレント学園にて。
「いやぁ! 平和平和! 素晴らしいほど平和だね!」
「そうだなぁ、こんな真っ昼間の中庭で官能小説読んでいられるぐらいには平和だ」
「ちょっと黙ってアオ」
ここ最近はどうしてか、とても平和な毎日を送れているような気がする。多分今までの視線やらなんやらはネネさんの手下とかそこら辺だったのだろう。それもあの事件を経たことでなくなった。これでわたしの順風満帆な学園生活が来るってわけよ。
「ふはは、ふーははは、はーっはっはっは!!」
「こんな中庭でそんな大口開いて笑うなんて、端ないですよ」
「そうだそうだもっと言ってやれ〜」
「いやアオだってこんな中庭で官能小説よんでる……くせ、に?」
今なんか、ここにいるはずのない声が聞こえたような。いや、いやいやいやいやそんなはずはない。だってここにいるはずがないよ。あそこまでこてんぱんにされた上に、アオにあんなに嫌味を言われていたのに。そんなワケ……。
「ヒョッ……! ね、ネネさん!?」
「御機嫌ようカンナ。それにアオ」
「おー」
「いや、おーじゃなくって!!」
わたしを見下ろす影、それは紛れもなくこの間アオが戦ったネネさんのものだった。ついでにわたしを誘拐した張本人。
「なんでネネさんが……」
「ふふ、私がいることがそんなに嫌なのですか?」
「そ、そんなワケないっ!」
「ですが」
「おい、そこまでそこのアホをいじめてやるなよ」
アオの言う通りネネさんにいじめられていた哀れなわたしを、アオは呆れた顔をしながら助け舟を出してくれた。さすがアオ、たとえ相手がどんな人であろうとも決して態度を変えない。誠実なのか興味ないのかが怪しい。
と、考えていたらアオがわたしをネネさんと同じように見下ろしてくる。ジッと無表情で見下ろしてきたと思えば、なんとも厭な笑みを浮かべた。あれ? なんだろうこの笑み。すごく嫌な予感しかしないんですが。
「ネネ、素直に友だちになりに来たって言っといたほうがいいぜ。裏を書くんじゃなくてな。この猫かぶり女」
「っ……!」
「……え?」
とも、だち? 友達って、もしかしてあの友達ですか? ニヤニヤとした笑いを浮かべたアオが、顔を真赤にしたネネさんをそれはもいじめにいじめ始める。頭がショートしそうになったわたしはその様子になんとか頭が冷えた。うん、この人は相変わらずだ。
「あ、あのネネさん?」
「……なんです。貴女も笑いに来たのですか? あんな事があったくせに、ノコノコと来た私を」
冷たい言葉とは裏腹に泳ぐ目、真っ赤な顔。後ろにいるヴァン……さん? が温かな目を向けていた。そしてわたしの方を見て睨むように鋭くさせる。うむ、鈍感なわたしにも分かるぞ。あれは「早く友達になれ、さもなくば殺す」だ。私はとてもチビリそうです。
でも、そっか。友達、友達かぁ……。
「そんなワケない! なろう、友達に!」
不思議な縁に結ばれた、不思議なわたしたち。そんなわたしたちが友だちになるのだって、何かの運命だ。なんてクサイことを思う。絶対に口にできないしね!
「貴女って子は、とても考えなしですね」
「友達ならもうさん付けいらないよね? ネネって呼んでいい?」
「構いませんよ。私もカンナと呼びます」
「うん!」
オアが来て、もはやわたしの元の退屈な平穏は遠いかなただ。でも、それでも少しは感謝してやってもいいよ。アオ。
「……ふぁ〜ぁ。ん、青いなぁ」
でも、平和だ。そうつぶやいて眠ろうとするアオのその顔は、とても満足そうなものだった。
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これにて2章完結です!
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