第16話「その悪魔、覚悟を決める」

カンナ:紅茶にはミルクを入れる派。ストレートでも一応飲む。

アオ:紅茶には砂糖もミルクも入れる派。ストレートであまり飲まない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 前回のあらすじ。カンナの警戒心は赤ん坊レベルだった。


「お前なぁ、あの覚悟を決めたような顔は何だったんだよ。全身甲冑で戦場に行ったかと思えば丸裸にされて帰ってきやがって」

「そのワードセンスは一体どこから出てくるの……だってぇ〜」

「だってじゃねぇよ。はぁ……」


 あの後、わたしはしっかりネネさんと仲良くなり、今度街で買い物をすることになった。当然アオはいい顔をしなかったし、寮に帰って今怒られている。


「アイツ、何を考えているのか私にもわからねぇ。これだから貴族の女ってのは」

「わたしも貴族の女だけど? 男爵家の」

「お前は別物だ。アホは何をしてもアホなことになるだけだ。警戒して何になる」

「いま本気でアオのことしばきたくなったんだけど。やっていい??」


 本気で悪いとも思ってなさそうなその顔がさらに倍腹立つ。しばこうとアオに飛びつくけど、それを簡単に避けてすぐに正座の体勢に戻される。え、今のなに魔法か何か? 何をされたか見えなかった。


「そもそも、アオは何がそんなにネネさんのことが嫌なの? なにか企んでるっぽいから面倒ってだけじゃないでしょ。見た限りずっと毛嫌いしているじゃん」

「……うーん。そういえばなんでだろ」

「え、なんの理由もなく毛嫌いしてたの?」


 なんでだろうと首を傾げるアオについ呆れてしまう。でも、アオは人に嫌悪感を懐くほど人に対して興味はない。それはここずっといたわたしがよく分かっている。クラスの人間も名前や顔は覚えど、どんな階級だろうがどれだけ影響力のある人に対してもアオはいい意味でも悪い意味でも平等だった。いや、ほとんど悪い意味だけど。


「アオって、本当に人に興味がないんだね」

「何、人ごと見たく言っているんだ。カンナのほうが人に興味ないだろ明らかに」


 え、それこそ何言っているのかよくわからない。わたしは人にバリバリ興味あるし、何より友だちが欲しいんだからあるに決まっている。アオこそ何言っているんだろう。そう思ってジト目でアオを見れば、何故かアオも同じような顔をしてわたしを見ていた。


「だってカンナ。お前、相手が自分に何をしようが、どんなに嫌なことをされようが、どんな事を考えていても興味ないだろ。自分の好きなこと以外、お前は思っている以上に人に興味なくなるし、特にドライだぞ」

「そんなこと、ないけどなー」

「ま、どっちにしろお前が街に行くなら私もついていく。二人っきりにしてたら何に巻き込まれるのか分かったもんじゃないからな」

「人を歩くトラブルメーカーみたいに言わないでよ」

「事実だろ」


 事実じゃないですー。アオの方がトラブルメーカーだから。しかも自分から巻き込まれに行くか起こすタイプの最悪な確信犯タイプだから! 絶対そう!!

 そんなことを言い争いしていたからか、わたしはさっきの話を忘れていた。わたしが思ったよりもドライであるというその言葉を。


 それが今、牙を剥く。


 ****


 そして、とうとうその日はやってきた。そう、カンナとネネ・ゴールデンのお出かけの日だ。というわけで。


「イエーイお出かけー」

「やる気の無さがすっごいんだけど」

「あるわけぇねぇだろ。お前を起こしてご飯食わして、服装や髪型を整えるのに何時間かかったと思ってるんだよ」

「お世話になりました」


 こいつの世話は忙しいが、私はこいつの執事だ。別にそれは問題ない。あるとしたらこいつの服のセンスと寝癖のすごい髪ぐらいだった。だからやる気のない理由はそこにはない。本音を言えば、今日が来ないでほしかった。どうにもあの女と関わるのが嫌だと、私のなにかが叫ぶからだ。


「あ、ネネさん!」

「カンナさん。おはよう、とても素敵な装いね」

「えへへ、すべてアオがしてくれました。ネネさんもいいね、かわいい!」


 それでも、カンナは友人を欲している。たしかにこの年のやつに友人がいないのは、教育にも情緒的にも、これから先のことでも良くない。心を許せるやつはいたほうがいいのだ。


「はぁ……だからといってこれはなぁ」

「あら、人の顔を見てため息だなんて酷いです」


 見下ろす黒い頭。白いワンピースという、なんともベタな清楚な服。黒い髪から覗いた赤い目は、やはりというか何かを企むような嫌な光を宿している。それとは別に、時折見せた鋭い視線が背筋を凍らせてくる。きっとこいつのこの視線に気付けるやつはそう多くないだろう。カンナはアホなので置いといて、学園でアイドルのような扱いを受けているということは、こいつの擬態が完璧だからだ。


「いえいえ、思わずその美しさに感嘆しただけですよ。ご機嫌麗しゅう、ゴールデン公爵令嬢様」

「うふふ、言葉が上手なあなたに免じて許します。貴方こそ元気そうで良かったです。アオ」


 こいつが何を企んでいるのか、それをじっくり暴いてやる。暴いたその先、この女の狙いが私だった場合、話は早い。もし、こちらに危害を加えるようであるなら、そのときは。


「えっと、じゃあ話に出てきたカフェに行こう! 有名なパンケーキ、どんな味がするんだろう。ジュルリ」

「はい、楽しみですね」

「まずはよだれを拭いてくださいオジョウサマ」


 そのときはカンナには悪いが、殺すしかない。私は、私一人で全員の命を守り、敵の命まで守ってやれるほど、万能じゃないのだから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 はーい、サブタイトルネタ切れです。無理あったんで、今日からできるところは失格つけてやります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る