第14話「そのヒロイン、追求しそこね失格」
カンナ:犬より猫派。でも鳥も好き。この間可愛い鳥をアオに見せたら焼き鳥? 食べるの?と言われた。喧嘩した。
アオ:犬より猫派。でも人間だったら犬系の方がいい。扱いやすいから。(ゲス)
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前回のあらすじ。助けた女の子が国で二番目に高貴な身分の人だった。死んだ。
あれ、なんか温かい? それになんだろう? この頭の下にある物は。こんなに柔らかく、それでいてしっかり反発していてとても寝やすい。そう、まるで低反発まくらのような……――。
「お、起きたかカンナ」
「え、アオ……?」
目を開けた先、そこに居たのは本を読むアオの顔。しかも下から見たバージョン。それだと言うのにそのイケメンっぷりは衰えていなかった。くそ、このイケメンめ! どのアングルからでもカッコイイと言うのか!
「ん? 下から見た……??」
「起きたのなら早く退け。痺れるだろうが」
「痺れる……?」
その言葉にわたしは下に視線を落とす。そこにあったのは間違いなくアオの太もも。え、もしかしてこの低反発まくらってアオの太もも!? とどのつまりそれは膝枕!!
「うわぁあ!? な、なん、なんで膝枕!?」
「あ? お前が私の服を掴んで離さないからだろうが。全くこのガキめ。まだまだ甘えたがりだな」
へっとバカにしたように笑うアオに怒りが湧いてくる。でも確かにアオの服を握りしめているわたしの拳を見たら言っていることは本当なんだろう。だって手汗でしっとりしているから。やだ恥ずかしい!!
「もう! だったら起こしてくれてもいいじゃん!!」
「んあ? 何度か起こしたぞ。でもお前ぐっすりだったし」
「それでも起こして……ちょっと待って。今アオ何見てるの??」
「あー……? これ」
「ヒョッ……!!」
アオが珍しく本を読んでいることにどこか引っかかったわたしは、その本を見てみた。するとなんということでしょう。奴はわたしが買った現代文学書を見ていたのだ。しかも結構過激……濃密な内容ものを……っ!
「いやぁあああ!!! 何見てんの返して!!」
「あっ、今いい所だったのに何すんだよ」
「やかましい! 人のもの勝手にみて!! しかもなんでこれなの!?」
わたしの愛する神小説家。その最新作をあろうことかアオは見ていたのだ。まだ見終わってないと不機嫌になるアオを無視し、わたしはその本をひったくった。
「もう見るなぁ! わたしみたいな人種はこういうの見られると死にたくなるの!! 特に理解のない人(?)が見るのが1番堪えるの!!」
「別に理解がないとは言ってねぇだろうが。私のいた時代じゃ男色文化は普通だったぞ。特に戦場ではな」
「その話もっと詳しく」
アオはいつから生きていたの? とか色々聞きたいことが合ったこともなくはないけど、それ以上にその男色文化の方に興味がそそられる。いやあれですよ? 別にBでLなものが好きとかではなく、歴史的文化の一環として興味があるだけですから。だから今すぐその男色文化について詳しくっ。
「ま、それは追々として」
「追々じゃなく今すぐ、何よりもそれ大事!」
「お前、明日は魔法薬学のレポート提出日だったろ? やったのか」
「……あっ」
わたしの勉強意欲と反しアオの言葉に思わず固まる。そういえばそんなのも合ったようななかったようなぁ……はは。
「カンナ、やってねぇんだな?」
「はい……」
「やれ」
「…………はいっ」
結局わたしはアオから男色文化のことを聞くこともなく、その日は買ってきたばかりの本も読まずにレポートに取り組んだ。ちなみにアオはその間でわたしの買ってきた本すべてを読破した上に、隠していたコレクションまで読んでいた。うえーん。
「ん? あれ? なにか忘れているような……」
「なんだ、そこがわからないのか?」
「あ、はい。教えてくださいアオ先生」
まぁ、いっか。忘れるってことは大したことじゃないよね。
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キーンコーンカーンコーンと、2限目の授業の終わりを告げる鐘が鳴り響く。つまりお昼ご飯の時間になったわけだ。
「はぁ、終わったー! アオが見てくれたおかげでレポートめちゃくちゃ褒められたよ!」
あの後、2時間かけて作ったレポートはわたしが思っていた以上の出来となり講師の先生をとても驚かせた。それはもう、目玉が飛び出て顎が外れるぐらいには。多分あのままだとレポート点はクラスで一番だと思う。
「良かったですねぇオジョウサマ。講師の驚いた顔が面白かったな」
「うん、その分失礼ともいうけどね……」
「それで、飯はどうする? 食堂に行くのか」
「うーん、でも今日はアオが作ってくれたお弁当があるし、天気もいいしなぁ」
そう、今日はわたしがレポートを頑張って終わらしたご褒美としてアオが弁当を作ってくれたのだ。ほとんどアオに教えてもらったし、文法だって見てもらったけど。というわけで今日は食堂ではなく、天気もいいので中庭に行きたい気分だった。
「じゃあ中庭に行くか」
「うん!」
「では、私もご一緒してもよろしいかしら?」
「いいよぉ……?」
あれ、なんかいまアオとは全く違う。低くない女の子の声がしたんだけど。後ろから聞こえたその声に振り返ると、そこにいたのは絹のような黒髪に、宝石みたいに輝く赤い瞳の清純な雰囲気を持つ爽やか少女。
「ね、ネネ、ネネ・ゴールデン……っ!?」
そう、そこにいたのはこの学園1・2を争うほどの有名人ネネ・ゴールデンだったのだ。
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