第12話「その序章、波乱にて失格」
カンナ:今作のヒロイン。貧乳。
アオ:今作の保護者。胸筋がとても立派。
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わたしが通う学園は王都の北部に位置していて、とても賑やかな場所だ。それなりに物はあるし、娯楽も揃ってる。それに何より……。
「グフッ、グフッフフフフ……ようやく買えた……同人、わたしの心のオアシスである先生の最新作が!!」
そう、わたしの趣味である現代文学書を読み漁るという至高の趣味。その趣味を堪能するため、目当ての先生の新作を探し続けたのだ。
「ふっふーん、この本を手に入れるために2時間ほど本屋を探していた甲斐があった! まぁ他にも色々とウヘヘヘヘ」
今日は休日。いつもだったら寮の部屋に引きこもって現代文学書を読み漁るという大事な使命があるけども……残念ながら今わたしの部屋には奴がいる。そう、鬼悪魔ことアオだ。アイツがいる限り本を読むにしても何をしても邪魔。絶対にイタズラとか変なことに巻き込まれるんだ! それだったら外に出てこうやって本を探した方がいいに決まっている!!
「あ〜あ〜素晴らしきかな趣味に走る人生! こういうのは1人だから楽しいのだよ」
まぁたしかに? 久しぶりに1人での行動は少しだけさび、違和感を持つけども? それでもあのトラブルメーカーの塊であるアオが居ないだけでもうとても静か。平穏、平和。これぞわたしの人生って感じだよね!
「よーしこれをアオの居ぬ間にさっさと読もーっと」
「――ッキャ! あの、やめてください!」
「んんぅ!? 」
帰り道の途中に聞こえた女の子の悲鳴。その悲鳴を辿ってみれば、そこにいたのは女の子と……女の子を囲むチャラついたお兄さん達……。そう、親の顔よりもみる展開がそこに拡がっていた。
「なんてテンプレな……って違う違う!」
男に囲まれた女の子がとても困っている。そしてそれはきっと無理やりのはず。そしてここにいるのは何故かわたし1人。……ならばここでわたしがすることはっ!
「今すぐ大人の男の人か主人公らしき男の人を見つけること!」
「いやぁーー! 誰か助けて!」
大人の人、もしくは彼女を颯爽と助けてくれそうな主人公を探しに行ことするわたしに、何故か声を大にして助けを呼ぶ女の子……。いや待ってよ。無理だってわたし一人じゃ。わたしの腕を見て?? こんなにヒョロガリ。これじゃあ助けに割って入っても返り討ちに合うか、わたしも一緒にナンパされ……いややっぱり返り討ちに合うだけだよチクショウ!
「誰かー! 誰かー!」
すまない、女の子。すぐに助けを呼んでくるから。本当に秒で呼んでくるから! だから……だからさ、こっちを見るのやめて貰えます!? よく見えないけど絶対にこっちをみているじゃん! やめてよわたしに何が出来るっていうの!
「だ、誰か……お願い……」
「――あの、すみまひぇん……ソ、しょのこを……は、離してくださイッ!!」
そうしてわたしは自ら問題ごとに首を突っ込んだとさ。めっちゃ噛んだし、最後声が裏返ったっ! コミュ障にしては頑張った方でしょ!! あんな、小動物みたいに怯えた顔されて、見捨てられるわけないじゃん!
「「「ああ?なんだてめぇ」」」
「ヒゥ……スミマセン……」
ハイハイ白旗白旗。男3人でか弱い女の子睨むとか治安悪すぎぃ。ほら見てよ、わたし1人で何ができるって話しよ。ホント勘弁勘弁。お金あげるんで許してください。
「おいおい嬢ちゃんもオレらと遊ぼってぇのか?」
「イエ……ソンナンデハ……」
「遠慮すんじゃねぇよ、ほらこっち。この子とオレらで一緒にアソビましょうねぇ」
「いや、やめてください! 私、これから……」
「ヒョェ勘弁してください……ッ!」
結局振り絞ったわたし渾身の勇気もただ事態を悪化させただけ。ほらね、やっぱり誰か連れてくるべきだったんだよ。こんなことならアオを置いていかずに連れてくればよかったっ! 肝心な時にいつも居ないんですけどあの従者!!(理不尽)
「チッうるせぇな良いから来いって言ってんだよ!!」
「イ、痛いっ!」
「!!」
しかしいつまでも強情に動かない私たちに、男の1人が舌打ちをして女の子の腕を掴む。その乱暴な掴み方。絶対に跡になるぐらいの力……、さすがにヤバい!
「だ、ダメ!!」
「うわっ、なんだこの女! クッソ、離しやがれ!!」
「ウヘェア!」
思わず掴んだ男の腕に掴みかかってその手を外そうとしたけど、残念ながらわたし一人のもやしの力ではこんなもの。すぐに押されて尻餅を着いてしまった。というかきゃって咄嗟に可愛い悲鳴が出ないんだけど。これが女子力の差か? ウヘェアって……。
「もういい。その女もコイツも痛い目見して連れてくぞ!」
「えっ……ちょまっ!」
とうとう沸点の切れた男が拳を振り上げてくる。いやいやどうしてそうなるの! という文句が出てくれば良かったけども、殴られそうになったわたしはただ目をつぶって衝撃と痛みを覚悟するだけだった。
と、していたが。
「――へぇ? どう痛い目見せるか……ぜひ教えて欲しいな私にも」
「うぐっ! 首がっ……」
「な、てめぇ誰ウゲェッ!!!」
その瞬間、いきなりわたしの襟首を誰かが掴んだかと思えば、人を殴るような鈍い音と共に冷たい声が聞こえてきた。間違いない、この声は。
「あ、アオ……」
「全く、お前は1人になるとろくでもねぇことしかしねぇな?カンナ」
わたしの襟首を乱暴に掴み猫みたいに持ち上げたそいつは、先程わたしが寮の部屋から置いていったアオだった。
「うわーん! アオーー! 助かったよーー! 怖かったぁ!!」
「あーはいはい。全く、これだからガキのお守りは。いいから離れてろ。秒で終わらす」
「うえーん、頼もしいー!」
相変わらずヒーローみたいにタイミングのいいアオの、誰よりも頼もしい言葉に安堵の涙が止まらない。
そしてその後、乱暴な男たちを秒どころか瞬殺したアオに怯えることになったのだった。
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