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【☆】神から赦されていないと感じる統合失調症患者が、宗教団体に食われていく様子をシミュレーションしてみました。

──『神「井上和音赦しはしない」』──

☆☆☆


 2024年8月16日(金)。21時17分。夏季休暇最終日。


☆☆☆


 「神から赦されていないってどういうこと。まさか、井上さん、罪を犯した……。


 ならば私がなんとか取り計らってみる。任せて」


~三日後~


 「井上さん。持ってきました。この掛軸に手を合わせたら神もきっとお赦しになると思うわ」


~一週間後~


 「神から赦された。自由になれたと。全てはこの掛軸のお陰だと。いやー、私どもとしても井上さんが赦されたのは非常に喜ばしい出来事でして。また一人悩める一人の人間を救うことができました。


 ところでですね。この掛軸は井上さんだけが独占するわけにもいかないわけなのですよね。救いを求めていられる方々は他にもたくさん居て。掛軸を回収しに来たのです。本当に申し訳ありません。……え。掛軸をどうにかして持っておきたい。無いと不安だ。困りましたねえ。ただ、他の救いを求める方々はお金を出してまで、この掛軸をレンタルして、回してきたのですけれどね。ええ。他の方々は一週間1000円でレンタルされていたのですよ。ええ! 一週間5000円払うからこの掛軸を一生レンタルさせてくれ!? いやあ、でもこれは一点ものですし……。うーん。分かりました。5000円ですね。井上さん特別に持っていていいですよ。仕方がありません。井上さんを見棄てる訳にはいきませんからね! では5000円頂いてよろしいでしょうか。あ、はい。クレジットカード決済にも対応しておりますので。はい。これでオーケーです。井上さんは未来永劫救われましたね」


~半年後~


 「井上さん。そろそろ結婚とか考える時期だと思われます。同じ救われたもの同士で結ばれたのならば、そのご子息は必ずや神の御加護がありましょう。半年間神に祈り続けた井上さんを私たちも見てきましたので、井上さんはA2ランクの方との結び付きを許可します。来週開催されるお見合いパーティーに参加なさることを願います。参加費は無料です」


☆☆☆


 神「井上和音赦しはしない」。


 こんにちは。井上和音です。


 神「井上和音赦しはしない」を統合失調症の方は真面目に本気で思う方も大勢いると思われますが、多分、神から赦されていないとか他人に言ってしまったら、☆の間のミニ劇場みたいな感じで1週間5000円のサブスクを毎日取られる人生になってしまうのかなと思います。


 井上和音赦しはしない。


 「井上さん! 井上さん! 井上さんは赦されています。井上さんは自由なんです! ほら。日本史が勉強したいと言ったから紙の本で『現在の日本史 近世』と『歴史研究第722号 怨霊』が届いていますよ。読んでいいんですよ。買っていいんですよ。自由なんです! 井上さん! 井上さん! しっかり!」


 統合失調症患者は往々にして罪の意識を感じますが、そもそも罪を持っていたとして、罰が無ければそれはまあ良いのであって、統合失調症という幻聴とか暗号とか、経済的に貧困に陥る人生になると、どうしても自由が無くて、神から赦されていないとか考えてしまう生き物ではあります。


 神から赦されていないってどうしようもないので、ミニ劇場の宗教勧誘だったり、自死に走ってしまったり、普通の人からは想像も付かないような行動に出てしまう可能性が高いわけです。


 自分は罰を受けていると感じない唯一の方法は、自分が自由であることをちゃんと自認することですね。家庭環境とかでこれがかなり難しい方も大勢いると思います。自分も自由が無かった時期のほうが多かったので、大いにその気持ちは理解できます。その場合の自分に出来る小さなこととして、自由で手に入れたものを指折り数えてみるというのがあります。自分の場合は本だったり、Kindleなんかが腐るほどあって、これを読む読まないの自由がそこに存在していることで、生きている実感が湧いてきたりします。そのおかげで貯金が消えていってしまっているのですが。要はバランスを考えながら自由を求めようねと言われているような気がします。


 短めでいいですかね。私は自由だあ! と狭い自分の部屋から叫んでおきたいと思います。

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