第2話
カタカタカタカタカタ
ウイーーーン パサ
オフィス内で聞こえてくるのは、キーボードを打つ音だけ。
左右にも人がいるけど仕切りで遮られて、お互いに見えないようになっている。
そんな環境の中で、パソコン脇に置かれたシマエナガの縫いぐるみが癒しになる。
シマエナガの小さな
PC右下の角にAM10:00を表示する。
15分の休憩だ。
ガヤガヤと席を立つ音がする。どこからか会話も聞こえてくるが直ぐに途切れオフィスのドアが開く音に代わる。
ポコン スマホ画面に通知が出る
親友の山田からだ。画面を開くと短い文章で
「今夜18時駅前に来られたし」
「御飯?」と返信する
「期待されよ、おごりじゃ」
(おごりならば行くしかないね。)
「
約束の五分前に駅前到着。
「着いたよ 今どこ?」メールを送る
「バス停前に居酒屋あるでしょ?そこ」
どうやら店の中にいるようだ。
田舎の駅前は飲食店が少ない、目指す居酒屋も大衆居酒屋と
大衆居酒屋は地元の若者で賑わっている。
アラサー女子には赤提灯が似合うだろう。昭和の
カウンター席に山田を見つけて隣に座った。
「姫おつかれ~」
「ごめんね待った?先に始めてたんだね」
カウンター越しに大将が無言でおしぼりを渡してくれる。
「とりあえずビールで」
このセリフも自然に言えるようになってきた。
ビールとお通しで、まずはカンパイ♪
「金曜日に乾杯!」
「アハハ何で金曜日なの?」
山田の目が
「昔から言うでしょお?花金…って」
「古っ…山田~さては出来上がってるなぁ?」
カタン
山田を挟んだ奥から手が伸びてきて、ジョッキを取り上げた。
「あれ?一人じゃなかったんだ?」
「僕を無視して二人でいきなりカンパイするんだもん、悲しいなぁ」
「宮島さんごめ~ん、てっきり二人だと思ってたから」
「いい~の!こいつは保護者だからぁ」
山田と宮島さんは山田が学生の頃から付き合っている。
「三人で乾杯やり直そうか?」
ジョッキを持ち上げ宮島さんに聞く。
「ああ、今日はもう一人来るから待って…」
カラカラ
店の引き戸が開く音がした。
「おお!こっち」
宮島さんが腕を伸ばして、手招きする。
「悪りィ、遅くなった」
私の後ろを通ってカウンター席の奥に進む。
(背もたれに掛けたカバンが邪魔かな?)
振り向いてカバンに手をかけた。
「あ…」
「?」
「その節は…」
「何?二人はもう知り合い?」宮島さんが首をかしげる
「ああ、いえ…日曜日に
「ん?シマエナガのストラップの人だろ?」
「そうです、スマホに付けてるこれ」
スマホに付けた、シマエナガの絵が描かれたストラップを見せた。
「ホント、姫ちゃんシマエナガ好きだねぇ」
宮島さんがカウンターに頬杖をつきながらしみじみと言う
「だってかわいいでしょう?つぶらな瞳が」
「どこで買ったの?」山田もニヤニヤしながら聞いてきた。
「三月に函館行った時。五稜郭タワーで買ったの」
ワイルドさんは宮島さんの隣に座り、焼き鳥と烏龍茶を注文していた。
「何だよお前も、飲まないの?」
宮島さんがワイルドさんに詰め寄る。
「非番なんだよ、ハーレーで来たから飲めん」
「そりゃ~お疲れなことで」
ジョッキビールの泡がポチッと弾けた。
(そういえば、神社でもヘルメット持ってたね…)
四人で乾杯のやり直しをして、女子二人だけ酔っぱらいになった。
「大丈夫?送っていこうか?」
ワイルドさんが腕を支えてくれる
「だいじょおふれす…たくしーでかえりまふから」
「大丈夫には見えないけどねぇ」
ずり落ちそうなカバンを直してくれた。
「ひめ~~おくってもらいなよぉ。ふへへへ」
山田も宮島さんに支えられながらというか、もたれかかっている。
「俺こいつ運ぶから、お前が姫子ちゃん送っていけよ」
「わたし!タンデムはしない主義なんれす。だからタクシーで帰りまふ」
「一度タクシーで送ってから、バイクを取りに戻るよ。それならいいだろ?」
「??はひーー」
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