素戔嗚尊は櫛稲田姫を溺愛する

笠原源水 

第1話 プロローグ

 とある神社を参拝した時、ふと不思議な気配を感じた。

鳥居をくぐると、左手に小ぶりのおやしろたたずみ、そこには櫛稲田姫くしなだひめと書かれている。

 手水舎ちょうずやには硝子ガラスの鉢が置かれていて、鉢の中には花が浮かんでいた。

引き寄せられるように正面の本殿に近づくと、サラサラと優しくほんのりと暖かな風が全身を包み込む。

参拝を終えて社殿に御朱印を頂きに行くと、

コトリ 

隣にいつの間に来たのか気づかなかったが、少しワイルド系のライダースジャケットを着た男性がヘルメットを台に置き、お守りを選んでいた。

邪魔になると思い、社殿の端に移動する。

「あの・・・」

「?」

「すいません、これ・・・」

「え?・・あ!やだ・・・ごめんなさい」

会計カゴの横にスマホを置き去りにしてしまった。

恥ずかしい・・・御朱印帳を受け取ると、サッと社殿を後にした。

この出会いが、これからの自分の人生を変えるとも知らずに。

 

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