島を目指して、港町へ
イーズゲニア島を目指す道中の夜、むむむ、とでも言っていそうな顔でイヴイレスが地図をにらんでいた。
「焚火にあまり近づけるなよォ。」
とアニールが近づきながら注意した。イヴイレスはハッとして、
「ああ、すまん。」
と陳謝した。
「で、どうしたの。」
アニールはイヴイレスの隣に座って、地図を覗き見た。
「ああー、なんとなく分かった。船、でしょ。」
「そうだ。一応今はティール港町を目指してるが、船が全滅してるか独占されてるかもしれん。……代替の方法や他に船のある場所はないものかと考えている。」
「代替ってゆーと……。」
「ユーア飛ばすのは駄目だ。」
「だね。危なすぎる。うーんでも……、ま、漁が必須な村とかだったら必ずあるだろうし、そういう村はありそうなものだよね。」
「それは考えていた。それが最有力の代替計画だが、一応他にもないものか考えてる。」
「んじゃ、私の方でも考えとく。ほどほどにね。」
と、アニールが立った。
「ああ。分かっているさ。」
と、イヴイレスが少し笑みをこぼした。
「よし、全員いるな。では、これからの予定を話そう。」
翌朝、馬車の外にて全員が輪になって座し、イヴイレスが今後の計画について話をしている。
「これから目指すのはティール港町だ。」
と、地面に広げられた地図の一点を指し示した。
「といっても、もう十数年前の地図だ。今は港町が存続しているかわからない。そのことも頭に入れてくれ。もし町が無くなっていた場合は、そのまま沿岸部を沿って移動し、漁村などを探そうと思う。で、だ。」
地図上に掌を開いて、
「みれば分かると思うが、十数年前の勢力図を参考にしてヴェールで作られた地図だ、これは。だから、一定の知見に基づいて正確に作られているから信用していい。ティール港町はエイジリア影響下にあったことが分かるし、イーズゲニア島はヴェールだ。だから、運よく船を見つけても、島には運行していない可能性が高い。まあ交渉次第になると思うが、エイジリアには様々な偏見や迷信が王国及び王国に近い教会の下で広まっていた。」
「詳しいなイヴイレス。」
「エルベン……。お前は知的好奇心が無さすぎる。まったく、師匠に世界の話を面白がって聞いていて良かった。さて、イーズゲニア島には魔族がいるらしい。エイジリアは主に“異なる”ことを異端視しているから、まあティールでも偏見があるだろうということは推測できる。だから交渉したとしても難航することは頭に入れてほしい。で、ティールが無理だった場合、」
指で沿岸をなぞりながら
「このように北上しながらヴェール領に近づいていく。国境がどうなっているかは分らんが、まあ国が健在であれば滅んだエイジリアを既に占領しているだろうし、向こうも相当に荒れているだろう。だから、基本的には今までの旅程と変わらないということだ。これで私からは以上だ。」
「ちょっといいか、イヴイレス。」
手を挙げたのはアルトだった。
「馬車持ってんぞ、俺ら。だから、島に行く際交渉役と馬車守役とを分けて行けばいい。その分担は?」
「それについては、一応アニールがリーダーだから、アニールが行くのは決定しているな。あとは……、後で全員で話そう。」
「一応て、イヴイレスぅ。」
アニールがイヴイレスの背後に回り、イヴイレスの頭を拳でゴリゴリし始めた。
「いてて。済まなかった、済まなかった。」
「そうか……。じゃあ俺から皆に。かつてヴェール侵攻の際に軍でヴェール付近に生息している魔物について説明されたから今話す。」
その後も議論は延々と続き、日が暮れたころに打ち切られた。
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