第18話 星の王子さま、助言する
ー とある旅館の一室 ー
(そうか・・・・、先輩は母親が亡くなったのは自分のおねだりが原因だと罪悪感を抱いてしまったのか・・・・。結果、先輩は家族に対しても甘えを見せない真面目過ぎな性格になってしまったんだな・・・・。)
遥香ちゃんたちの話を聞き終えた俺は、遥香ちゃんと絹江さんに言った。
「話は分かった。だけど、それで大文字先輩を許すことは出来ない・・・・。」
遥香ちゃんと絹江さんは、ショックを受けた表情になっていた。
そんな二人に構わず俺は続けた。
「今、遥香ちゃんたちがすべきは家族で嘘偽り無く本音の言葉で話し合うことだよ。」
「多分、理事長、学園長、大文字先輩と遥香ちゃんは、本音で語り合っていないだろう。」
遥香ちゃんは思い当たる節があるような感じだった。
俺は構わず続けた。
「どこかで取り返しの付かないすれ違いが生じてしまうことになる。だったら、本音でとことん話し合うべきだよ。」
俺が一通り話し終えると、遥香ちゃんと絹江さんは決めたのか話してくれた。
「新條様、有り難うございます。貴方の言う通り、家族全員で話し合います。」
そう言った遥香ちゃんの表情に迷いは無かった。
そして、それは絹江さんも同じだった。
絹江さんも遥香ちゃんたちの母親が亡くなって以降のことを気にしていたんだろう・・・・。
その日は、俺、遥香ちゃん、絹江さんの三人で夜中近くまで俺が修行先で体験した話を二人に語った。
翌朝、朝食を済ませた俺は旅館を後にすることになった。
旅館の玄関前には、遥香ちゃん、絹江さん、旅館の女将さんが見送ってくれていた。
「皆さん、泊めて頂き有り難うございました。」
「いいえ。喜んで頂き何よりです。また、機会があったら宿泊して下さい♪♪」
女将さんが嬉しそうに言ったあと、遥香ちゃんが頭を下げてきた。
「新條様、有り難うございました。一度、姉たちと話し合います。貴方の助言のお陰で、決意することが出来ました。」
「私からもお礼を言わせて下さい。私も長く大文字家に仕えていましたが、私も目を逸らしてしまいました。ですが、私ももう逃げません。」
(この二人がいれば、大文字先輩たちも自分たちを見直せるだろう・・・・。)
俺が内心で思っていると、遥香ちゃんが近付いてきた。
「あの・・・・、新條様いいえ康雄さん、有り難うございます。貴方のお陰で勇気が持てました。」
そう嬉しそうに言った遥香ちゃんは、少し背伸びして俺の左頬にキスをしてきた。
「これは・・・・、お礼です♡」
呆然とした俺だけでなく、女将さんと絹江さんも顔を赤らめながら驚いていた。
俺は、ぎこちない動きで絹江さんに振り向いて尋ねた。
「あのぉ~~、絹江さん、俺は理事長たちに刺されませんよね・・・・(汗)」
そんな俺の言葉に絹江さんはにこやかに答えた。
「生命保険を掛けることをお薦めしますわ♪♪」
「・・・・。俺の人生、詰んだわ・・・・。」
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遥香ちゃんと絹江さんに助言した康雄。
そんな康雄を意識し始めた遥香ちゃん。
家族の話し合いが出来ても、康雄の明日は無いような気が・・・・(笑)
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