第17話 星の王子さま、謝罪される

ー とある旅館の一室 ー


夜、俺は露天風呂を満喫して料理も堪能した。

露天風呂は疲れた体に心地よく、料理は豪華ではないが味や量は文句なしだった。

そんな中で、部屋の窓から林に囲まれた目の前景色を夜景も兼ねて眺めていた。

「いやぁ~~、心も身体も満喫するなぁ~~♪♪」


夜景を楽しむと同時に、夜風に当たっていたが、絹江さんと一緒に遥香ちゃんが訪ねてきた。

「夜遅く失礼します。お身体は大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ、遥香ちゃん。そう言えば、まだ、自己紹介をしていなかったね。俺は・・・・。」

「存じています。新條康雄様ですよね?」

「どうして!?」

そんな俺の疑問に絹江さんが答えた。

「旅館に着いてすぐに、旦那様に遥香お嬢様のことと助けてくれた貴方の報告をして、その時に・・・・。」

絹江さんの話を聞いて納得した。


それを聞いた上で、俺は改めて言った。

「改めて、俺は天陵学園1年の新條康雄だ。そして、遥香ちゃんのお姉さんである大文字先輩については、知っているよね?」

「・・・・、はい。」

「そのことについて俺は、・・【新條様、姉が申し訳ございませんでした!!】」

俺が言い終える前に、遥香ちゃんが謝罪してきた。

そして、絹江さんも同じように頭を下げて謝罪をしてきた。


予期せぬ展開に俺は戸惑った。

「遥香ちゃんと絹江さんが謝る必要は・・・・。」

「お祖父さまから聞きました。貴方の活躍や挑発した姉を一蹴したことも。そして、貴方だけが処分を受けたことも・・・・。」

「そうだったのか・・・・。けど、遥香ちゃんが謝罪する必要はないよ。」

そんな俺の言葉を聞いても、遥香ちゃんは話を続けた。

「いいえ、私が謝罪したのはもう一つ、私たち家族のことです。」

「遥香ちゃんたちの家族?」

無言で頷く遥香ちゃんと真剣に俺を見る絹江さんの二人。

「分かったよ・・・・。話を聞くよ。」

こうして、俺は二人の話を聞くことにした。


「新條様は、私たちのお母さまが私が産まれて間もなくして亡くなったのはご存じですか?」

俺は無言で頷く。

「私たちのお母さまが亡くなったのは、事故なんです・・・・。」

「事故!?」

それは初耳だ。

「私が産まれて間もない頃、お母さまは私の育児で精一杯で姉と一緒の時間は、中々、取れませんでした。」

「ある日、姉がお母さまと一緒に買い物がしたいとおねだりをしました。そして、お母さまも約束してくれました。」

あの大文字先輩が、普通におねだりをお願いしていたんだ・・・・。

「ですが、奥さまと静香お嬢様の約束は果たせませんでした。」

「それって・・・・・。」

「はい。車で買い物に行く途中、交通事故に遭いました・・・・。静香お嬢様は助かりましたが、奥さまは・・・・。」

「原因は、居眠り運転をして対向車線を飛び出した相手運転手の過失です。」


そこまで聞いて、俺は大文字先輩の生真面目すぎる性格の原因に気付いた。

大文字先輩は、自分のおねだりが原因で母親が亡くなったと罪悪感を抱いたんだな・・・・。

だからこそ、我が儘をしないで妹や家族を守る正義感の強い性格になってしまったんだな・・・・。

そして、理事長と学園長は大文字先輩の過去を知っているから可愛がってしまうようになってしまったんだな・・・・。



____________________


静香の妹である遥香から聞いた静香の生真面目過ぎる性格の切っ掛け。


康雄は、どんな感情を抱いているのか・・・・?




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