第16話 星の王子さま、相手の正体を知る

ー とある旅館 ー


俺は、助けた女の子(10代前半くらい)と女性(60代前半くらい)の案内で到着した旅館の前にいた。

一見すると、老舗旅館らしい雰囲気だけど、だからといって一般人でも気兼ねなく利用出来るような建物だった。


俺が旅館の外観を見ていると、中から女将らしい人が出て来た。

「お嬢様、絹江さん、お帰りが遅かったので心配しましたよ。」

「ごめんなさい、女将さん。お嬢様と散歩していたら、羆と遭遇してしまったんです。」

「羆とっ!?」

「はい、動けなくなった私を助けたのが、こちらの方です。」

二人の話を聞いた女将さんは、俺が羆を撃退したのが信じられなかったのか、しばらく俺を見ていたが納得したのか俺に頭を下げてお礼を言った。

「お嬢様と絹江さんを助けていただいて、有り難うございます。」

「女将さん、この方は宿を探していたので、助けていただいたお礼にこちらの旅館に泊まって頂こうと考えているのですが・・・・・。」

「お代の方は、私側が立て替えますので。」


三人が少しやり取りをしていたが、話が纏まったのか女将さんが言った。

「そういうことでしたら、是非、当館をご利用下さい。」

三人の好意を無下には出来ないから、俺は女の子たちの申し出を受け入れた。

「こちらこそ、宜しくお願いします。」

こうして俺は、この旅館に一泊することになった・・・・。


仲居さんの一人の案内で、提供された一室に入った俺は荷物を置いてから窓を開けて外を見た。

「この部屋から見る景色は、中々の絶景だな・・・・。あの子たちが配慮してくれて、嬉しいな・・・・。」

しかも、室内用露天風呂も設置されているから、正に至れり尽くせりだ。

「本当に、良いのかなぁ~~。」

少し、不安になった・・・・・。


すると、そこへ先ほど助けた女の子と女性が訪ねてきた。

「失礼します・・・・。改めて、先ほどは助けていただき有り難うございました・・・。」

二人揃って頭を下げてきたので、俺も同じように頭を下げた。

「たまたま、通りがかっただけなのでお気になさらず・・・・。」

「いいえ、貴方は私たちにとって命の恩人です。」

姿勢を正した二人は自己紹介を始めた。

「私は、お嬢さまが幼少期よりお仕えしている春野絹江(はるの きぬえ)と申します。」

「そして、私は大文字遥香(だいもんじ はるか)と申します。」


二人の自己紹介を聞いた俺は、内心で絶句した。

「君は、天陵学園に家族がいるのかな?」

「はい。祖父が理事長で、父が学園長、姉が生徒会と剣道部に所属しています。」


(誰かの面影があるなと思ったら、大文字先輩の妹かよ・・・・!?)



____________________


康雄が助けた女の子が、実は静香の妹だった。


康雄にとって新たなる出会いか?それとも・・・・😓

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る