第9話 星の王子さま、暴走族集団を撃退する

ー天陵学園 1ーA組ー


自宅での歓迎会をしてから三日後、俺は何事もなく学園生活を過ごしていた。

大文字先輩が俺に対して突っ掛かってくることを懸念したが、そういったことは無かった。

ちなみに、嫌がらせをしていた花野だが、クビは免れたものの理事長、学園長、教頭から、かな~~りお灸をすえられた。

しかも、半年間の減俸も受けて、生活はかなり困窮しているそうだ。

廊下や教室でも、花野は俺を見る度にビクついていた。

同時に、花野は同僚や生徒達を見下すことはしなくなった。


その日は、三時間目の授業中だった。

もうすぐ、三時間目の授業が終わる時、校庭から複数のバイクの爆音が響いてきた。

俺やクラスメイト達だけでなく、他のクラスの生徒達や教師達も窓から様子を見た。

すると、校庭には30台くらいのバイクが爆音を鳴り響かせていた。

校庭には、体育の授業中だった生徒達は体育教師と共に隅っこに避難していた。


「おいっ!!ここの学校に大文字静香という生徒がいる筈だ!!今すぐ出て来いっ!!!」

暴走族のリーダーらしい見た目はオッサンに見える男が声を張り上げて言ってきた。

直後、校舎から数人の教師が来て、リーダーの男に聞いた。

「我が学園の女子生徒に、何の恨みがあるんだね?」

「悪いことは言わないから、帰りなさい。既に、警察には通報済みだから。」

教師達は怯まず、毅然とした態度で相手に話していた。

(普通ならば、怯えまくりなのに肝っ玉が据わっているな・・・・。)

俺は内心で、教師達に感心していた。


だが、相手の男は引き下がらなかった・・・・・。

「ふざけるなっ!!!現に俺の部下二人がその生徒に一方的に酷い目にあったんだぞっ!!!!」

その言葉を聞いた俺は、先日の自宅での俺の歓迎会の時に、会田と柿崎と一緒に買い出しをした時に女の子たちを庇って二人組の男を大文字先輩が撃退したのを思い出した。

暴走族の連中をよく見ると、そのナンパ男二人組がいた。

(成る程、そういうことか・・・・。)

恐らく大文字先輩に叩きのめされたナンパ男二人がリーダーの男に都合の良い嘘を吹き込んだのだろう・・・・。


「その女を出さないのならば、こちらから校舎に乗り込んでやるっ!!!」

リーダーの男の言葉に周りの暴走族の連中もテンションが高まり、今にも乗り込みそうだった。

『康雄よ、何かあったら躊躇わずに行動しろ・・・・。』

師匠の言葉を思い出した俺は、躊躇わずに行動した・・・・。


ー天陵学園 2ーA組 大文字静香視点ー


・・・・、アイツら先日のことを逆恨みして、こんなことを・・・・!!

だけど、ここまでの事態になると、私だけではどうすることも出来ない。

どうすれば・・・・。

その時、クラスメイトの一人が驚きながら、言った。

「ねぇ見てっ!!一年の新條君が教室の窓から飛び降りたわっ!!」

私を始め、周りのクラスメイト達も見たが、確かに新條君が窓から飛び降りていったっ!!

嘘でしょっ!!彼の教室は3Fよっ!?

でも、目の前の光景は現実だった・・・・。


ー天陵学園校庭 新條康雄視点ー


皆も驚いていたけど、幼い頃から師匠に鍛えられていたから問題は無かった。

着地した俺は、暴走族のリーダーに言った。

「あんたが何を吹き込まれたかは知らないけど、その女子は強引にナンパしようとしていたその二人組から女子達を守っただけだ。」

「もう一つ言うと、そいつらはありきたりな捨てゼリフを残して逃げたよ。」

そう言って俺は、二人組を指差した。

すると、二人組は気まずそうに視線を逸らした。俺の予想通り、リーダーに都合の良い嘘を言っていたみたいだ。


だが、リーダーの男は信じたくないのか、俺に言い返してきた。

「嘘を言うなっ!!!」それに対して俺は「だって、その時に近くを通り掛かったから見ていたよ。最も、その二人は女子生徒にコテンパンにされた所だったから。」

俺の言葉を聞いたリーダーは、愕然としていた。

無理もないか、信じていた部下二人に嘘を言われたのだから・・・・。


すると、ガタイの良い男が近付いてくるなり、俺を殴る蹴るをしてきた。

周りがザワつく中、ガタイの良い男が言った。

「俺は、元レスラーだ。土下座するならば、今の内だぞっ!!!」

どうやら自分が凄いのを見せれば、俺が怯むと思ったのか?

呆れた俺は、言い返した。

「お前のパンチや蹴りはそれなりだけど、猛獣と比べたら大したことは無いな・・・(笑)」

俺に言われた元レスラーは、顔を真っ赤にしながら再び、俺の顔面に向けて拳で殴ろうとした。


だが、元レスラーの拳は俺には届いていなかった。

俺が片手で受け止めているからだ。動揺する元レスラーの拳を強めに握ると、指の骨にヒビが入ったのか、元レスラーは悲鳴を上げた。

「俺の拳の骨にヒビがっ!?痛ぇよぉ~~!!」

情けない声を出す元レスラーを、俺は回し蹴りで元レスラーの横っ腹に蹴りを入れた。

結果、俺の回し蹴りを喰らった元レスラーは勢いよく吹っ飛びながら数メートル先の木に衝突して、泡を吹きながら気絶した。

「で・・・・・、次は?」

俺は軽く威圧を放ちながら、低い声で言った。


俺に恐怖したのか、リーダー以外の連中が次々と襲いかかってきた。

俺は連中の攻撃を躱しながら、手刀で相手を気絶させるか、拳や蹴りを喰らわせて相手をノックダウンさせた。

結果、10分後には、立っていたのは暴走族のリーダーだけとなった・・・・。

「はっ!!これだけの部下達を軽くあしらうとは・・・・。やるじゃねぇか!!」

「だったら、俺が相手にしてやるっ!!!」

そう言って、リーダーの男は構えた。

男の構えから、格闘技か拳法の嗜みがあると見た俺も、構えた。


もはや、周りの人達も何も言えない中、俺とリーダーの男は格闘を始めた。

俺は無駄な動きを避けつつリーダーの男に拳や蹴りを仕掛けたが、リーダーの男は両腕を顔の前にかざして盾にしながら俺の拳や蹴りを凌いでいた。

更に、リーダーの男も、無駄な動きを避けつつ体力消耗を抑えていた。

「惜しいな・・・・。それだけの素質を持ちながら・・・・。」

俺が呟いた時だった。


元凶のナンパ男二人組が目を覚ましたのか、小型ナイフを持って俺に襲いかかってきた。

しかも、連中は自分達のリーダーも狙っていた。

恐らく、自分達が嘘を付いたのがバレてリーダーに報復されるのを恐れて、俺もろとも襲うつもりみたいだ。

俺はリーダーの男を軽く突き飛ばして巻き込まれから回避させた直後、一人を力強く腹パンを喰らわせて膝間尽かせた後にもう一人の男には思い切り体を蹴り上げて数メートル空中に舞わせた。

直後に俺もジャンプして同じ高さになった所で、男の顔に拳を叩き込んで地面に叩き落とした。

結局、男の周囲に軽めのクレーターが出来上がった中で、男は腰を突き上げる形でピクピク痙攣しながら気絶していた。


結果、天陵学園に殴り込みをしていた暴走族集団は、30分くらいで全滅した・・・・。

暫し呆然としていたリーダーの男だったが、ナンパ男二人組以外のメンバー全員を慌てて叩き起こした。

(まだ、やるつもりか・・・・?)

そう思っていた俺だったが、直後にリーダーを始めとする暴走族集団全員が、俺に対して一斉に土下座して言った。

「「「「「「「「俺達全員を、貴方の部下にして下さいっ!!!!!!」」」」」」」」


・・・・・・・・・・、はいっ?今、なんて言ったのチミ達は・・・・・・!?



____________________


静香への御礼参り目的で乗り込んできた暴走族集団。


康雄が連中を壊滅させたけど、連中は康雄の部下になると言ってきた・・・・。


これは、お約束の展開じゃあないよね・・・・😅

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る